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介護タクシーコラム

国土交通省へ行ってきた(第2回)

タクシー

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第1回目を掲載してから3か月余り経ってしまいました(反省…)。前回、「介護タクシー」「福祉タクシー」などと呼ばれるタクシーに大差はなく、「福祉輸送事業限定(福祉限定タクシー)」という同じカテゴリーにいるというお話をしましたが、「限定」であるがゆえに一般タクシーと違うルールがあることを国土交通省で聞いてきました。

理解しておくと介護タクシーがもっと使いやすくなりますので、ぜひ参考にしてください。

国土交通省へ行ってきた(第1回)を読む

利用できる人が限定されている

国土交通省の通達「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」では、サービスの対象となる旅客の範囲をこのように記載しています。

  1. 身体障害者手帳の交付を受けている者
  2. 要介護認定を受けている者
  3. 要支援認定を受けている者
  4. 上記1~3のほか、肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害やその他障害により単独での移動が困難な者であって、単独でタクシーその他の公共交通機関を利用することが困難な者
  5. 消防機関又は消防機関と連携するコールセンターを介して、患者等搬送事業者による搬送サービスの提供を受ける患者
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骨折して松葉杖でも利用できる?

もちろん付き添いの方も乗車できます。表現は少し端折りましたが、4.の部分で利用基準がかなり曖昧になりますよね。健康な人でもケガなどで一時的に歩行困難になった場合も使用できる。という解釈なので、公共交通機関の利用が困難かという判断はある程度事業者に委ねられているということです。自分で判断できない場合は事業者に確認するしか方法がないですね。

ちなみに法人タクシーのサービスに照らし合わせて質問したところ、旅客課の担当者の見解は以下の通りでした。

  • 陣痛タクシー(妊婦さん、または出産後の通院利用):△(利用者の状況による)
  • KIDSタクシー(通塾などで小さな子どものみの乗車):✕(福祉限定のルールに反する)
  • ケガや病気、障がいによる理由が必要で、単純に公共交通機関の利用が難しいからという理由ではダメなんですね。

    営業エリアが限定されている

    福祉限定タクシーの営業エリアは原則として都道府県単位です。ただこの点に関しても弾力的に境界地域の設定が各地方の運輸局長によって決められています。「うちの近くには介護タクシーがいないから利用できないのかな?」と不安に思っている方はまずは同じ都道府県内の事業者にお問い合わせください。

    迎車料金はかかってしまいますが、お住まいの都道府県内の事業者で、時間が空いていれば依頼を受けてくれるはずです。

    利用方法が限定されている

    一般タクシーは走っている車両に手をあげて乗車することができますが、福祉限定タクシーはできません。運送の引き受けを営業所において行う輸送に限る。というルールがあるからです。当日の利用であっても必ず予約が必要になるので気をつけましょう。

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    病院などで予約以外の客待ちも禁止されています。

    通院利用で時間の読めない帰りの介護タクシー。行きで利用した介護タクシーに待機してもらうこともできますが、待機料金が利用者の負担になってしまいます。事業者は帰りの時間を予想して戻ってくる、もしくメーターを落として待機している場合もありますが、利用者は病院で介護タクシーの到着を長い時間待つことも多いのです。

    利用者の利便性向上のため、病院での客待ちについては新しいルールを作っていく必要がありそうですね。

    民間救急は消防庁の認定を受けた専門知識を持った事業者

    介護タクシーをインターネットで探していると、よく目にするのが「民間救急(患者等搬送事業者)」という言葉です。民間救急の資格を取得できるのは、福祉輸送事業限定事業者、一般タクシー事業者、バス、自家用有償旅客運送事業者などで、車いすやストレッチャーのまま乗車できる車両仕様、設備などの条件があります。

    患者等搬送事業者認定証と認定車両証(見本)

    認定証と認定車両証(見本)

    車両設備などの要件が同じ部分が多いことから、民間救急の専門業者以外に、民間救急の認定を受けている介護タクシー事業者が全国的に多くなってきています。民間救急事業者は、2年に1回応急手当や搬送方法に関する講習を受ける義務があるので、救急車を呼ぶほどではないけれど、医療処置を受けながらの移動が必要な方は民間救急を利用すると安心です。

    通常は病院や施設、居宅介護、訪問看護ステーションなどから依頼をすることが多いです。またイベントの医療救護を行なっている事業者などもあります。

    福祉有償運送は地域交通の最終手段

    福祉有償運送事業についても質問してきました。本来、移動困難者に対してタクシーを含む公共交通機関の整備がない地域での最終的な施策として認められている福祉有償運送。営業車両(緑・黒ナンバー)ではなく、一般車両を使用する移送サービスです。NPO法人などが運営主体となるため、営利を伴わない料金設定、タクシーのおよそ半分の料金で移送を引き受けています。福祉有償運送は通院・通所利用がほとんどで、利用目的と理由を記した旅客名簿の作成を義務づけられています。

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    車両側面に表示義務のある記載事項(見本)

    ただこの福祉有償運送、一般タクシーや福祉限定タクシーと競合してしまう地域も少なくありません。特に福祉有償運送が通院・通所をメインで請け負うので、福祉限定タクシーの新規開業を希望している方にとって、売上の柱となる移送の引き受けが困難になるからです。

    タクシーなどの交通インフラが整備されていない地域交通の最終手段として認められている福祉有償運送が、一般タクシー、介護(福祉限定タクシー)の収益減、介護タクシー開業の妨げになっている。なんだか不思議な現象です。

    必要最低限の移動手段だけでなく、みんながお出かけを自由にできる環境づくりを。難しい問題ですが、福祉有償運送の必要性を協議する各地域の福祉有償運送運営協議会でもっと議論して欲しいですね。


    ちなみに福祉有償運送が盛んなエリアで介護タクシーの開業を検討する際は、事業者団体が各地域の福祉有償運送運営協議会に対して自社で行う移送サービスの紹介をすることができるそうです。次回はこれからの介護タクシーの役割について、意見交換をしてきた内容をご紹介します。

    国土交通省へ行ってきた(第3回)を読む

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    著者紹介

    滝口 淳(ライター)
    タクシー業界の片隅で仕事をしながら、介護福祉タクシー情報の分かりにくさを実感。障がいを持つ子どもの親として情報サイトの立ち上げを企画。現在取材活動中。

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