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介護タクシーコラム

介護予防vol.5 口腔機能の維持・向上は基本中の基本

介護・医療

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私は歯科、口腔に関する専門家ではありませんので、正しい歯磨きの方法や歯科の疾患についてなどの詳しい内容はお伝えできません。ですが一つだけ自信をもっていえることがあります。それは口腔機能の維持・向上は一番大切で、介護予防や健康づくりにおける土台部分であるということです。

介護タクシーやUDタクシーで気軽にお出かけができるように。今回のコラムは「なぜ口腔が大切なのか」その想いについてお伝えしていきたいと思います。

なぜ口腔機能の維持・向上なのか

介護予防、生活習慣病予防、健康づくりの全てにおいて、健康の三本柱の「運動・栄養・休養」はもちろん大切です。ですが、それらの土台として一番大切なことは、口腔機能(歯と口の健康)をしっかり維持・向上することだと思っています。

なぜかというと、生きるための基本である「食べること」は、vol.4でお伝えした食事や栄養のバランスが基本になりますが、「口から食べ物を入れて、しっかり噛んで、飲み込むこと」自体ができなくては、食べることは難しいからです。

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若い方や、歯がしっかりある方、口周りや舌の筋肉が衰えていない方は自然とできます。しかし、口腔機能が低下(歯の本数が減ってしまったり、口周りや舌の筋肉の衰えなど)しますと、咀嚼自体が難しくなり、唾液の分泌も不十分になり、「食べること」は難しくなります。

食べられなくなってくると、摂取できるエネルギー量やたんぱく質やビタミン、ミネラルなど必要な栄養素も足りなくなり、自然と筋肉量や身体活動量が低下し、次第に身体を動かすことも難しくなります。その状態が続きますと、低栄養やロコモティブシンドローム、フレイル(全身の虚弱)、やがて寝たきりになりやすくなります。

口腔機能の役割

また、口腔機能の維持・向上は食べること以外にも、様々な役割を果たしています。例えば以下のような効果があります。

うつ・閉じこもり予防

口腔機能が低下していきますと、上手に話すことや表情を作ることが難しくなります。そして段々と恥ずかしさやわずらわしさを感じ、他者との会話やコミュニケーションを避けるようになり、うつや閉じこもりの原因になってしまいます。

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認知症予防

閉じこもりやコミュニケーション不足は外部から脳への刺激が少なくなります。また、しっかり噛むこと自体が脳への十分な刺激になるので、口腔機能の低下は認知症のリスクを高めてしまうことになります。

その他にもシニアの方に多い誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の予防や、若年層にも増えていると言われている歯周病を予防することは、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病、感染症の予防などに繋がります。このように、口腔の介護予防の柱(運動、栄養、うつ・とじこもり、認知症)や生活習慣病予防への関わりは大きく、私は口腔機能の維持・向上なくして介護予防は難しいと感じています。

高齢者は誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)に注意

本来食道から胃に入る食べ物が、気管から肺に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といいます。その食べ物は唾液が混ざっているはずですが、口腔内が清潔に保たれていないと唾液の分泌は不十分になり、口腔内は雑菌だらけになります。

誤嚥性肺炎は、その雑菌が食べ物や唾液と一緒に肺の中に入ることによって起こりやすい肺炎です。ちなみに、胃に直接チューブをつなげて栄養を摂取している方でも、睡眠中などに内容物が気管に入り、誤嚥性肺炎を起こすこともあります。

どんな方でも、時々食べ物が気管に入ることがあると思いますが、その時にむせて吐き出せればさほど問題ではありません。誤嚥しないように、よく噛むこと、よい姿勢での食事、とろみをつけるなどの最適な食形態を選ぶことが大切です。

そして万が一の時に吐き出す力を低下させないように「パタカラ体操」や「あいうべ体操」などの口腔体操を欠かさず行うこと、そして唾液腺マッサージをするなど、普段から口腔内の衛生環境をしっかり保つようにしていれば、かなりの確率で防ぐことができるはずです。

万病のもと、歯周病

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年代関係なく、最も注意すべきものが「歯周病」です。口臭、歯茎からの出血、歯を失う、といった印象があり、「自分には関係ない」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。しかし35歳以上の8割が歯周病ともいわれており、虫歯がなくても歯周病の方もいます。自覚症状がほとんどない状態で進行し、気付いた時には手遅れということもあります。

歯周病は進行すると、歯肉の血管から菌や菌が作りだす物質が体内に侵入するようになります。それは、体内では慢性的な炎症の原因となり、動脈硬化を起こしやすくなると言われています。

動脈硬化が起こると、血管の弾力性が低下し、全身への影響が懸念されます。例えば、血圧の上昇や心筋梗塞、脳卒中のリスクを高めたり、菌が出す物質がインスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きを弱め、糖尿病を悪化させるとも言われています。糖尿病が悪化しますと、合併症である網膜症、神経障害、腎不全のみならず、認知症の発症リスクも高まります。

このように、歯周病は口臭や歯茎からの出血、歯を失う原因となるだけでなく、全身の健康状態にも影響を及ぼします。その他にも、妊娠中の女性が歯周病ですと、早産リスクや胎児の発育不全を及ぼすと言われており、元気な赤ちゃんを産むには口腔ケアは不可欠となります。

若いうちからできること

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以上のように、口腔機能の維持・向上は、身体全体の健康をも左右し、思っている以上に介護予防・生活習慣病予防・健康づくりにおいて非常に重要な役割を果たしています。

現在、さまざまな健康に関する情報が流れていますので、健康志向の高い方は多いと思いますが、口腔の重要性に関してはご存知ない方は多いと感じます。高齢期になってからはもちろん、できるだけ早い段階で口腔に対して意識する必要があります。

定期的に歯科検診に行くこと

大体3か月に1度ほどのペースが理想的です。定期的に歯科検診に行かれることによって、早い段階で歯や口の異常に気付き、最小限の治療で済みますし、正しい歯磨きの方法などを教わることができます。正しい歯磨き方法については、こちらでは割愛させて頂きますが、間違った歯磨きをされている方が多いのではないでしょうか?公共交通機関での通院が難しい方に介護タクシーの利用をお勧めします。

訪問歯科の利用

高齢による衰弱などで、自力で歯科医院に行けない方や歯を磨けない方は、訪問歯科を利用するのも大切です。口の中はプライベートゾーンなので、もしかしたら恥ずかしさや申し訳ないという気持ちも出てきてしまうと思います。しかし、それ以上に口腔内の環境が悪化してしまうことの方が大問題ですので、ぜひ、上手に活用しましょう。

口呼吸をやめて鼻呼吸を意識する

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口呼吸をしていると口の中が乾燥しやすくなり、唾液の量が減ってしまい、口臭や虫歯、歯周病の原因になります。また、鼻呼吸と違って、直接花粉やウイルスが体内に侵入しやすくなり、アレルギーや感染症を起こしやすくなります。

普通に口を閉じていること自体が、口周りの筋肉を使っていることにもなり、長い目で見ると身近な口腔機能の維持・向上にもなります。フェイスラインがすっきりし、美容面からもオススメです。

その他に取り組んでいただきたいこと

たばこを吸わない、砂糖を多く含む飲料やお菓子などを食べ過ぎない、他者との会話やコミュニケーションを大切にする、顔ヨガなども口腔ケアの一環です。

きっかけは何でもよいのです

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仮に介護予防の為と思わなくても、ホワイトニングなどの美容の為、歯並びの矯正などきっかけは何でもよいのです。どんなきっかけでも口腔に関心を持つことが口腔ケアの第一歩となり、口腔機能の維持・向上につながるのです。

運動同様、始めるのに遅すぎるということはありません。いつまでも自分の口から美味しく食事を摂り、自分の足で行きたいところに行ける身体であり続け、将来介護を必要とする期間を短くするためにも、今日から少しずつ口腔ケアを始めてみましょう。

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著者紹介

藤田 朋子(管理栄養士・健康運動指導士)
千葉県松戸市生まれ。「将来、介護・看護を必要としない身体作りを広める」をコンセプトに、介護予防の分野で幅広い世代に向けて活動中。 高齢者指導、特定保健指導の他に母子保健や執筆など活動内容は多岐にわたる。

藤田 朋子ブログ Fトモの本音

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