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介護タクシーコラム

2019年10月消費増税で介護タクシー利用料金は上がるのか!?

タクシー

消費税アップに不安な人たち

いよいよ10月1日から消費税が10%に上がります。一部の物品は軽減税率で8%のまま、買うものによって異なる税率が私たちの生活にどう影響してくるのでしょうか…。現段階でお店が対応に追われて大変なのは何となくわかります。では介護タクシーの料金は10月からどうなるのでしょう?ちょっと調べてみました。

UDタクシーは消費税分アップ

仙台駅タクシー乗場

UDタクシーの運賃は一般タクシーと同じ

まず本題の前にUDタクシーについてお話ししましょう。8月末日、国土交通省は各地方運輸局および内閣府沖縄総合事務局と同時に令和元年10月1日よりタクシーの運賃が変わります~消費税率改定に伴う運賃改定について~というプレスリリースを出しました。要するにタクシー運賃に消費増税分を転嫁しますよ、ということです。

名古屋駅タクシー乗場

運賃改定には利用客も敏感に反応する

複雑なタクシーの運賃体系

当然一般タクシーと同じUDタクシーは運賃改定の対象となります。一般タクシーは運賃に110/108を乗じた範囲内で初乗運賃、加算距離運賃が改定となります。タクシーの運賃形態は本当にややこしいので、一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会のプレスリリースを例にご紹介します。

特別区・武三地区の運賃改定表

23区+武蔵野市・三鷹市の運賃改定表

多摩地区の運賃改定表

多摩地区の運賃改定表

2020.02.16追記

多摩地区は2020年2月1日に再度運賃改定が行われました。上記の表は改定前のものです。


8%から10%への増税なので微妙な上げ幅ですね。じつは全国各地でタクシー会社が今回の消費増税に合わせて短距離運賃などの大幅な運賃改定を申請して各運輸支局での審査の段階にあったのですが、それが今回は見送りになったのです…。一部の省庁から「消費増税と同時はよろしくない」という声が上がったようで。想定外の事態にタクシー業界は大きく揺れています。

介護タクシーの運賃は据え置きが多い?

介護タクシー車両

介護タクシーの運賃はどうなるのか?

介護タクシーの運賃についてお話するうえで、説明が必要なのは「自動認可運賃」と「公定幅運賃」です。自動認可運賃は全国で99の運賃ブロック(地域単位)で設定された、事業者ごと個別の審査が不要な運賃体系のことを指します。介護タクシー(福祉輸送事業限定)の運賃体系はこの自動認可運賃が基本になります(一部例外あり)。

車庫で待機するタクシー

特定・準特定地域には減車や稼働調整などの制約がある

自動認可運賃はエリア内タクシー台数の70%以上の事業者が変更の申請をすれば、運輸支局が審査のうえ問題がなければ認可されます。もう一つの公定幅運賃は、ざっくり言うとタクシーの需要に対して供給が多い地域(特定地域・準特定地域)に定められた運賃体系です。

自動認可運賃と介護タクシー運賃のイメージ図

変更の申請をしない限り運賃は変わらない

9月13日現在、ほとんどの事業者が運賃変更の認可申請をしていない(東京運輸支局)

さて、かなり前置きが長くなりましたが、介護タクシーは一度運賃の認可を受ければ、変更申請をしない限り、その後自動認可運賃(下限)が変わっても認可当初の運賃で営業できるのです。先日、東京運輸支局へ取材した時点では介護タクシー事業者による運賃変更申請はほとんどなという状況でした。

介助料・機材使用料は任意に設定できる

車いす介助をする人

介助料などは事業者が自由に変更できる

これらの理由から全国的に見て運賃改定を行う介護タクシーはそれほど多くないと予想できます。しかし、介助料や機材使用料に関しては事業者が任意に料金を設定できますので、料金の改定がある可能性があります。利用している事業者に事前に問い合わせてみましょう。

介護タクシー事業者の方も、料金改定を行う場合は事前にホームページで周知するなど利用者への告知を心がけていただきたいです。

2023年10月からは「適格請求書保存方式」へ

請求書と電卓

消費税の扱いがより明確になる

本来なら消費者から預かった消費税は事業者が国に納税しなければなりません。しかし個人事業主など年間売上1000万円未満の非課税事業者や簡易課税制度を適用している事業者に支払う消費税は、国に納められることなく事業者の利益になっています。

これを益税といい、数千億円規模が事業者の手元に残っていると推計されています(日本経済新聞2019.1.19)。これを是正するのが2023年10月から採用されるインボイス(税額票)の発行を義務付けた適格請求書保存方式という制度です。

「介護タクシーの利用料金は非課税」は間違い

個人事業主が中心の介護タクシーは、消費税の対応が曖昧になる傾向があります。適格請求書保存方式では、消費税額を明確に記載した請求書(税額票)を発行、保存する義務が発生します。反対に適格請求書発行事業者(課税事業者)以外は消費税を請求することができなくなるのです。

今回の消費増税について、たまに介護タクシー利用者や事業者から「介護タクシーの利用料金は非課税」という話を聞くことがありますが、これは間違いで、利用する介護タクシーが課税事業者であれば、現状は支払った料金の中に消費税が含まれている。ということになります。(介護保険適用のサービスを除く)

料金が安ければよいという話ではない

これまで消費増税に関連する介護タクシー利用料金についてお話してきました。しかしこれは利用料金が高いのは悪くて安い方が良いということを説明しているのではありません。サービスに対して適切で正当な対価が支払われなくなれば、サービスの質の低下を招き、収益構造の悪化から廃業する事業者も出てくるでしょう。

そうなると私たち利用する側にとって介護タクシーは使いづらいものになってしまいます。これでは本末転倒ですよね…。難しい話ですが利用者にとって使いやすく、事業者も潤うといった環境整備が現状求められているのです。それを実現するには業界・行政が一体となってもっと知恵を絞る必要があるのだと思います。

2023年9月現在、消費税・益税に関する考え方やさまざまな解釈がメディア等で報じられています。本コラムは当時の新聞報道をもとに執筆しています。今後も議論がなされ、記事の内容が正式な見解と異なる結果となる場合がありますこと、予めご了承ください。

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著者紹介

滝口 淳(ライター)
タクシー業界の片隅で仕事をしながら、介護福祉タクシー情報の分かりにくさを実感。障がいを持つ子どもの親として情報サイトの立ち上げを企画。現在取材活動中。

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