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介護タクシーコラム

地域の医療と生活を支える介護タクシー(静岡県松崎町)

介護・医療

静岡県松崎町の風景

1月の終わり頃、仕事で熱海まで向かう予定があったので、少し足を延ばして静岡県賀茂郡松崎町まで行ってきました。少し足を延ばして…といったものの、熱海から車で1時間40分、目的地に到着したのは夕暮れ間近でした。

静岡県でいちばん小さい町・松崎町

石部の棚田

伊豆半島の西側に位置する松崎町は人口6,235人。静岡県内で最も小さな町です。人口増加率は5年間で-11.7%(2015‐2020年:総務省調べ)、人口減少が深刻な過疎地です。高齢化率は48.6%、町の約半分の方が65歳以上の高齢者です。要介護(要支援)認定率は9.2%、町内の約600名に介護・支援が必要な状況です。(2021年4月現在:静岡県・厚労省調べ)

雲見海岸から見える富士山
牛着岩と富士山(雲見海岸)
野天風呂「山の家」
江戸中期から続く野天風呂「山の湯」

自然豊かで史跡も多く、観光地として見どころ豊富な場所ではありますが、山林中心の地形で細い道や坂道も多く、電車やバスのアクセスも良くない。高齢者や障がい者にとって移動が困難な地域といえます。

松崎町で社会活動をしている伊東さん

合同会社里づくり総合研究所の伊東さん

今回の目的は、松崎町でいろいろな活動をされている合同会社さとづくり研究所、代表の伊東直記さんにお会いすることでした。町から移住推進事業委託を受け、地域課題に取り組む伊東さんに、松崎町のいまについて伺いました。

1995年に神奈川県から松崎町に移住

伊東さんは静岡県出身ですが、約10年間を神奈川県で過ごし、1995年にご家族と松崎町に移り住みました。救急病院で看護師として働くうちに、地域の疲弊を強く感じて2010年より社会起業家として活動を開始、2014年に合同会社さとづくり総合研究所を設立しました。

移住希望者は年間約80名、相談窓口として活動

松崎町への移住相談は年間約80名。伊東さんはコーディネーターとして年間8~16名の移住者の受け入れを行っており、ゲストハウスの運営や田舎暮らし体験ツアーの企画など、移住に係るさまざまな取り組みを行っています。

介護タクシー・民間救急・看護師として地域医療を支える

アットケアタクシーの介護車両

伊東さんは移住推進事業だけでなく、町内唯一の介護タクシー・民間救急(患者等搬送事業者)としても活動しています。@Care Taxi(アットケアタクシー:旧まつざきケアタクシー)は現在ドライバー4名に車両が3台、松崎町と田方郡函南町に営業所を構えています。

患者搬送を中心に介護福祉・医療・消防と連携

@Care Taxi(アットケアタクシー)では、通院など日常のお出かけから医療継続が必要な患者搬送まで幅広く対応しています。なかでも患者搬送に関しては、松崎町を管轄する西伊豆地域に救急車が2台しかないため需要が多い。したがって利用者の状況により、一般タクシーや介護事業者などにお願いすることもあれば、反対に他の事業者で対応できない方の依頼を受けることもあるようです。

車載用足折れ式ストレッチャー
足折れ式のストレッチャー
特注のストレッチャー用マットレス
患者の負担を和らげる特注のマットレス

行政からの依頼に応えてコロナ感染者の搬送も行っています。まずニーズに応えることを最優先に。伊東さんのお話から、松崎町は各事業者の利益を優先できるほどの余裕はなく、移動・搬送に係るすべての人たちが連携して、健康な生活を守るに戦っているのだと感じました。

ナース(看護師)としても活動

アットケアタクシーのドライバーは4名のうち3名が現役の看護師です。神奈川県の大学病院で10年間勤務していた伊東さんも、非常勤看護師という立場で現在も医療現場に関わっています。消防救急の隊員が対応できない医療継続搬送を担当したり、医師の指示を受けて適切な処置を行いながら搬送を行うこともあるそうです。

ゲストハウスの管理人として地域の交流を促進

ゲストハウスイトカワ

さとづくり総合研究所が運営する「ゲストハウスイトカワ」は、移住者希望者の相談窓口や移住体験、インバウンドと地域住民の交流の場として活用されている宿泊施設です。ここを活動拠点に移住促進、観光振興を行っています。

現在はコロナの影響で宿泊業務は休止していますが、移住相談はオンラインで受け付けています。残念ですが、宿泊者や地域住民が集う静岡(しぞーか)おでんの屋台やバーベキューコンロもしばらくの間お休みです。

外国人観光客に人気の屋台
マツザキ屋台Barともしび
バーベキューコンロ
バーベキューコンロ

介護タクシーで雇用創出

伊東さんは移住希望者で仕事を探している方に、介護タクシーの仕事を紹介しているそうです。地域の人たちとコミュニケーションを取りながら生活と医療を支える介護タクシーの仕事は、移住者にとって最適な仕事だと思いました。

ゲストハウスイトカワ入口
アットホームな雰囲気のゲストハウス
観光パンフレットなどを設置
地域の情報をまとめて紹介している

地域の移動に何が足りないのかを明らかにしていく

伊東さんのことを紹介してくれたのは、熱海で介護タクシーを営業している伊豆おはなの河瀬さんでした。伊豆おはなも熱海で地域の移動を支える介護タクシーです。思いが同じ人たちが地域を越えてつながっていくことは、すごく大切なことだと思います。

連携することで課題を見つけ、新しい需要をつくる

過疎化・高齢化の地域ではいろいろな課題を見つけやすく、連携も取りやすい(例外もあるかと思いますが…)。その反面、一部の大都市は高齢者・障がい者の移動や患者搬送についての課題が明確になっていないような気がします。NPOなどボランティアが頑張って表面的なニーズに対応できていることに甘えてしまっていて、潜在的なニーズや持続可能性という面で、課題から目を逸らしているように感じます。

誰もが健康なくらしを長く続けられるように。介護タクシーが担うべき役割はもっとたくさんあるはずです。行政や関係各所と連携して、新たな需要に応えられる、もっと頼もしい存在になって欲しいです。

合同会社さとづくり総合研究所

合同会社さとづくり総合研究所

静岡県の松崎町で起こる地域の課題を持続可能なビジネスで解決するために移住促進、ゲストハウス、介護タクシー・民間救急などの事業を展開している法人。

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