介護タクシーコラム
利用しやすい介護タクシーをめざして~JWMTO代表インタビュー~
みなさんは介護タクシーの全国組織、一般社団法人日本福祉医療輸送機構JWMTO(ジェウント)をご存知でしょうか?知らない方がほとんどだと思いますが、ジェウントは介護タクシー業界に働きかけて、全国の介護タクシーがもっと便利で使いやすい乗り物になるよう活動している事業者団体なんです。今回は理事長の村越さんに、ジェウントの活動内容や今後の介護タクシーについてお話を伺いました。
代表者プロフィール
村越 信一(むらこし のぶかず)
1962年東京都出身、ホームヘルパー2級、患者等搬送乗務員、視覚障がい者ガイドヘルパー。流通・小売業界を経て2004年7月に福祉移送サービスピクニックを開業。2014年から2021年にかけて一般社団法人福祉移送ネットワークアイラスの理事長を務め、2021年日本福祉医療輸送機構JWMTO(ジェウント)理事長に就任。
介護タクシーを支援する全国組織として設立
ジェウントの設立時期と設立までの経緯を教えてください。
設立は2015年の11月です。2020年の東京オリパラ開催に向けてUDタクシーを含む福祉タクシー(介護タクシー)の導入台数に目標が設定されるなど、介護タクシーに注目が集まるようになったことを受けて、全国組織の必要性を感じた既存の事業者団体が集まって、ジェウントを発足しました。
同じ業界でライバル同士でもある団体が集まったのですね。とても画期的な出来事ですね。
そうですね。設立当初はメディアにも多く取り上げられました。現在は全国8団体が参加しています。設立の目的は行政への提言・提案、サービスやスキルのレベルアップを通じて、お客様が利用しやすい介護タクシーを目指すことでした。行政への提言・提案については個々の介護タクシーから声を届けることが難しいので、ジェウントが窓口となって対応しています。
具体的には介護タクシー専用の運賃体系を検討したり、車両購入補助金の申請を円滑に進めるサポートをしたりしています。また災害協定など地域行政と介護タクシー事業者団体との連携を推進するなど、介護タクシーの中間支援的な役割を担っています。
UDタクシーとの連携は必要
ユニバーサルデザイン(UD)タクシーが登場しましたが、車いす乗車拒否などの問題が発生しています。この点についてはどうお考えですか?
一般タクシー会社も依頼があれば対応しているようですが、実際私が都内で営業していてジャパンタクシーが乗客を車いすのまま乗降させているのをほとんど見たことがありません。工程が複雑だったり、対応できる車いすの種類が限られているという理由もあるようですが、UDタクシーを利用できない車いすのお客様には介護タクシーが連携して対応する必要があると思っています。
ジェウントでは2016年8月に複数の車いすのタイプと福祉車両を東京夢の島マリーナに集めて、乗降の検証を行いました。また今年2月より、東京ハイヤー・タクシー協会(東タク協)と連携して、ジャパンタクシーでの輸送が困難なお客様にジェウント加盟の介護タクシーグループ、福祉移送ネットワークアイラスを紹介するという取り組みを始めています。
素晴らしい試みですね。成果は上がってきているのでしょうか?
目に見える成果はまだないですね。紹介がある場合はほとんどが当日依頼になるので、予約で動いている介護タクシーとのマッチングが難しいです。また東タク協からも紹介件数の報告がないので、利用実態が見えにくい状況です。ここは改善していく必要があると思っています。
利用しやすさを追求していきたい
これからのジェウントの活動についてお聞かせください。
2015年の設立から掲げていることですが、介護タクシー事業者へさまざまな情報発信、教育や研修の機会を提供することで、お客様の利便性を向上させたいと思っています。予約が取りやすい配車サービスや明瞭な料金体系の検討など、取り組めていないことがまだまだあります。
設立から7年で成果を上げたこともあれば、時間をかけて取り組んでいることもあるのですね。
私もそうですが、ジェウントのメンバーのほとんどが介護タクシー事業者なので、活動に専念することができません。もっと多くの介護タクシー事業者団体にジェウントへ参加していただき、規模を大きくすることで、より活動しやすい環境を作っていくことも今後の目標です。
それぞれ考え方が異なる個人事業主が中心の介護タクシーを、事業者団体としてまとめ上げることは難しいことです。その団体で構成するジェウントの運営はとても大変なことだと思います。利用者の目線で事業者が必要な声を上げ、より多くの声をジェウントがまとめる。簡単なことではありませんが、介護タクシー利用者のために活動を続けて欲しいです。