介護タクシーコラム
おでかけ認知症カフェvol.1 ~千葉編~
いま「認知症」はそのイメージを大きく変えつつあります。医療とケアの進歩はいわゆる「予後」を改善し、認知症と診断されてもそれまでと変わらない暮らしを続けられる人が多くなりました。かつてのような「認知症=衰弱した高齢者」というステレオタイプに当てはまらない人々が全国各地に現れています。
しかし、社会にはまだ古いイメージが残っており、そのギャップから生じる誤解は、しばしば当事者たちの「暮らしにくさ」に繋がっています。そこで認知症のある人や家族たちが安心して生活できるコミュニティづくりの核として、「認知症カフェ」という取り組みが進められています。
「認知症カフェ」は第一に認知症のある人、その家族たちによる交流の場ですが、家族会などと異なり地域住民同士(当然、認知症のある人も地域の一員です)の出会いの場として期待されています。そのため、すべての「認知症カフェ」は基本的に誰でも参加できるとされています。
このコラムは、まだ「認知症カフェ」を体験したことがない人にもその魅力を知っていただくことを目的とします。「学び」「体験」「ランチ」という切り口で3つずつ取り上げるので、もしどこか興味を惹かれるカフェがあれば、ぜひお出かけください。
自己紹介
コスガ 聡一(こすが そういち)
もともとはエンターテインメント分野の人物写真などを撮っていたカメラマンです。2011年頃から製薬企業が作るパンフレットの仕事で、日本を代表する認知症専門医の先生がたのインタビューに立ち会うようになりました。その取材を通じ、日本の(そして世界の)将来における「認知症」の重大性について初めて知ったのですが、同時にその最前線で社会を変革するために闘い続けてきた人々の存在も教わりました。
5年にわたる一連の仕事がひと段落したのち、自分にもこの分野で貢献できることはないだろうかと考えるようになり、当時ほとんど情報が集約されていなかった「認知症カフェ」の取材をはじめました。全国には素晴らしい取り組みがたくさんあります。本人でも、家族でも、専門職でもない立場で、認知症カフェの意義と可能性を伝えていくことを自らの役割と任じています。
みんなで認知症や介護について学ぶ「袖団(そでだん)カフェ」
開催日時
第3日曜 10:00〜12:30
開催場所
千葉県習志野市袖ヶ浦3-5-3-1 袖ヶ浦団地内集会所
参加費
無料
問い合わせ
047-451-6898(有限会社ウェルフェア)
完全バリアフリーの会場
千葉県習志野市の袖ヶ浦団地では、毎月第3日曜日に「袖団カフェ」が行われています。会場となるのは商店や交番などが集まる団地中心部にある集会所。バス通りから奥まったところにありますが、介護タクシーなどの車両は裏側から接近できるようになっています。集会所周辺や建物内は全く段差がない構造になっており、車椅子での参加も全く心配ありません。なおバリアフリートイレも完備されています。
習志野市の委託事業「ならしのオレンジテラス」
「袖団カフェ」が開催される日は、手書きの看板が入口に置かれ、カフェらしさを演出します。ちなみに「ならしのオレンジテラス」とは、習志野市が正式に委託して行われる認知症カフェ事業の名称です。現在、習志野市内では「袖団カフェ」を含めて5カ所で開催されています。
初めての参加者も歓迎される雰囲気
「袖団カフェ」は毎回40名もの方たちが参加する、千葉県内でも最も活発なカフェの一つです。うれしいことに初回参加者を歓迎する雰囲気があるので、ぜひ「はじめまして!」と挨拶をしてみてください。きっと人懐っこい常連さんが仲間に入れてくれるはずです。
専門家から認知症や介護について学べるミニ講話
参加者が集まり、コーヒーなどを飲みながら世間話に花を咲かせていると、やがてミニ講話が始まります。各専門家がそれぞれ独自のテーマについて、プロジェクターで資料を投影しながら話します。これまでは歯科医の先生が口腔ケアの大切さを説いたり、経験豊富なケアマネジャーが様々な介護サービスを紹介してきました。認知症や介護について気軽に質問できるチャンスなので、積極的に参加してみてほしいと思います。なお、ミニ講話がない日もありますので、事前にご確認ください。
隣では「おやこカフェ」も
「袖団カフェ」のすぐ隣では、親子連れを対象とした「袖団おやこカフェ」が同時に行われます。想像力を刺激するようなおもちゃで遊んだり、クッキング体験に参加したりする子どもたちの様子を眺めていると、こちらも元気をもらえる気がします。
グループホームの方々が活躍する「すももカフェ」
開催日時
第4月曜 13:00〜16:00
開催場所
千葉県船橋市金杉台1-1-5 café de STELLA
参加費
500円
問い合わせ
047-440-5767(株式会社コンフォートケア)
地元で話題のベーカリーカフェが会場
同じく千葉県内の団地で行われる「すももカフェ」を紹介します。こちらは船橋市・金杉台団地商店街に、2017年11月にオープンしたベーカリーカフェ「カフェ・ド・ステラ」が会場となります。普段は安くておいしいパンがたくさん並ぶ店内ですが、「すももカフェ」の日はパンではなく、シフォンケーキやアイスの乗ったクロッシュというスイーツが楽しめます。ゆったりと座れるソファも用意されているので、心地よく過ごすことができます。
グループホームの女性たちがお手伝い
「すももカフェ」の特徴は、近所の認知症グループホームに入居する女性たちが接客係として参加すること。認知症グループホームとは、認知症の診断を受けた方々が、サポートを受けながら自立的に共同生活を送る住まいです。そこでは普段から「できることは自分たちでやる」という習慣があり、その延長でカフェのお手伝いをかって出ているそうです。長年主婦業の「プロ」だったみなさんにとって、飲み物を出したり、片づけをしたりすることは、楽しみながらできることなのです。
「体験型」の認知症カフェ
「すももカフェ」では、そんなグループホームのみなさんともゆっくり話をすることができます。ケーキと飲み物のセットを運んできたあと、そのまま一緒に座って談笑しはじめるなんてこともしばしば。80から90歳にもなる大先輩たちとふれあう体験は、家族でもなければなかなかないできことです。その明るい生き方や、豊富な人生経験の一端に触れると、世界観が変わるかもしれませんよ。
駐車場とバリアフリートイレについて
会場である「カフェ・ド・ステラ」には、商店街のお客様用駐車場から段差のないルートで来ることができます。介護タクシーの場合もそちらがおすすめです。また店内はほぼバリアフリーですが、トイレの前だけ段差があります。車椅子の方にはすぐ隣にあるフィットネスジムのバリアフリートイレを案内していただけるそうです。
手作りランチでほっこり「認知症カフェ シオン」
開催日時
毎週火曜・第1木曜 10:00〜15:00
開催場所
千葉県市原市玉前1308-2
参加費
無料(ランチ500円、ドリンクのみ300円)
問い合わせ
080-3572-6681
おいしい手作りのランチがワンコインで
最後にランチをいただける認知症カフェを紹介します。毎週火曜と第1木曜に開催される市原市の「認知症カフェ シオン」では、500円のワンコインランチが好評です。地元の農家から提供される旬の野菜などを使い、ボランティアの女性たちが各家庭で磨いてきた料理の腕をふるいます。味がいいのはもちろん、ボリュームも十分で、大変満足感のある内容です。4人以上でランチをいただく場合は、ぜひ事前に電話をしてもらえるといいと思います。
懐かしさのある一軒家カフェ
「認知症カフェ シオン」は、昭和の雰囲気を残す大きな一軒家が会場となります。それゆえバリアフリーではない部分があり、特に玄関付近には飛び石や段差が残されています。そこで、これまで車椅子で来場する方には、庭の方から敷地に入り、縁側に作られたスロープから、上がってもらっているとのこと。その際には常連のお客さんたちも加勢してくださるそうです。介護タクシーで来られる方は、お手数ですが駐車場所などをカフェ側にご確認ください。
常連さんたちが大活躍
「シオン」の常連さんたちは、単なるお客さんというより「キャスト」に近い存在。開始当初に空き家だった建物をきれいにし、広い庭の手入れも行うなど、普段から活躍されています。「認知症カフェがなかったら出会っていなかった」というメンバーたちですが、運営スタッフ・ボランティアとともにその雰囲気を大事に作り上げています。「認知症カフェ シオン」を訪れる際はぜひ、地元の人たちとの交流も楽しんでください。