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介護タクシーコラム

介護予防vol.6 外出しましょう!

介護・医療

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みなさんこんにちは。今回で最終回となる介護予防コラムのテーマは「閉じこもり」「うつ」「認知症」予防についてです。これらは独立しておらず、かなり密接に絡んでいる部分ですので「閉じこもり」を中心にどのように関わるのか、お伝えしていきたいと思います。

閉じこもりの定義

「閉じこもり」とは、1日のほとんどを家の中または家の周辺で過ごすような、生活の活動範囲が非常に狭くなっている状態のことです。以前と比べて外出の回数(庭先、ゴミ出しは含まない)が減っていたり、何事にも興味・好奇心が薄れてしまい、1日中ボーっとしながら過ごす人、気軽に直接会って会話したり遊んだりする仲間のいない人は年代かかわらず要注意となります。

閉じこもりのタイプと原因

「閉じこもり」には、大きくわけて以下の2つのタイプがあります。

1.ケガや痛み、病気などが原因で外出できないタイプ

膝や腰が痛くて歩くことが困難な方や、脳卒中などの後遺症で身体が不自由な方がこのタイプに当てはまります。外には階段や急な坂道、舗装されていない歩道、お店に入る時の段差などがあり、痛みのある方や身体が不自由な方にしてみたら億劫に感じてしまうと思います。また、転倒でケガをされた方、痛い思いをされたことのある方は、その時の恐怖が原因で外出をためらってしまうこともあります。

2.ケガや病気など外出できない要因がないタイプ

本来なら身体的な面では外出できるはずなのに、外出する目的がないために閉じこもってしまいます。

閉じこもりの何が問題なのか

家の中で静かに過ごす分には大きな問題はなさそうですが、平成12年に実施された新潟県長岡市旧与板町健康調査によりますと、2年間の比較追跡調査の結果、2つ目の「外出できない要因がない」のに外出しないタイプの方の予後は外出している人と比べて、次のような結果が出ました。

  • 歩行障害 2.30倍
  • 要支援状態 2.85倍
  • 要介護状態 1.63倍
  • 認知機能障害 3.05倍

そもそも、外出をしないということは、自然と身体活動量の低下につながり、ロコモティブシンドロームや転倒のリスクを高めることに繋がります(歩行障害)。身体活動量が低下すると、必要なエネルギー量も低下してしまいますので、食事の量も徐々に減り、低栄養リスクが高まり、身体は衰弱していきます(要支援状態、要介護状態)。

食事量や外出頻度が減り他者との関わりが減ると、口腔ケアを怠りがちなってしまったり、会話をすること、身支度を整える、計画性をもって行動するなどの知的活動も減り、自然と脳への刺激も少なくなっていきます(認知機能障害)。このように、閉じこもりには、要介護状態になるリスクが潜んでいます。

閉じこもりは「社会的孤立」に繋がる

旧石器時代から戦後までの歴史からも理解して頂けると思いますが、本来ヒトは群れ(社会)で生活する生き物です。しかし、現在は少子高齢化や核家族化が進み、3~4世代同じ屋根の下で暮らしている家庭は随分少ないのではないかと思います。

ここで問題になってくるのが、「社会的孤立」というものです。社会的孤立とは、同居家族以外との接触頻度が極端に少なく、特に65歳以上の男性に多いと言われています。原因の1つとして、今まで仕事以外での交流や趣味を持たずに定年を迎え、どのように過ごしてよいかわからない、ということが挙げられます。

  • 別居親族との接触
  • 友人や近所の人との接触
  • 対面接触(会ったり、一緒に出掛けたりする)
  • 非対面接触(電話、メール、ファックスなど)

上記の4つが週に1回未満の状態が社会的孤立と言われており、死亡リスクが約1.5倍にもなるそうです。

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閉じこもり状態になりますと、徐々に社会的孤立状態になります。すると、本来社会の中で生きていく性質があるにも関わらず、自分自身の存在意義などもわからなくなってきてしまい、うつ状態などメンタル面での不調も現れやすくなり、ますます社会や他者との交流を避ける傾向にあります。

そして、刺激のない単調な毎日を送ることに繋がり、ますます体力の低下、認知機能の低下を引き起こすことになるのです。

閉じこもり状態を予防する為の提案

このように、閉じこもりを続けることは心身共に大きなリスクを伴います。もちろん、身体が不自由で自力で外出することが難しい場合は、介護タクシーを利用されたり、車いすで移動できるようなら、介助者の方はぜひ外に連れ出してみてください。これから外での散歩がしやすい季節になります。気分転換も兼ねて、街中の季節の変化や会話を楽しみながら、たまには普段入らないようなお店に入ってみるのも良いと思います。

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2つ目のタイプである「外出できない要因がない」方は、まずは小さな目的でも構いませんので、とりあえず外に出てみましょう。

  • ポストに手紙を投函する
  • 近所の喫茶店でコーヒーを飲む
  • 買い物に付き合う

といった感じで構いません。徐々に生活空間を広げられるようになってきましたら、自治会や町内会の活動やイベントに顔を出してみたり、地域の高齢者クラブや交流館、体操サークルなどに足を運んでみますと、新たな人間関係を築くきっかけにもなります。

そこから、今までやりたかったけどなかなか出来なかったこと・・・例えば文化活動やスポーツ活動に挑戦してみたり、新たな趣味を見つけてみてはいかがでしょうか?

ちなみに、私が今まで関わってきた方の中には、「定年退職をしてから水泳を始めて、もう10年。今では4泳法泳げますし、ここで出会った方とお友達になれました。」という方もいます。この方は、ずっと水泳とは無縁だったそうですが、近所に室内プール施設が出来たことがきっかけで、「挑戦してみよう」と思い立ったとのことです。

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普通に外出が出来る方は、社会との繋がりや自分の生きがいや役割も見つけて頂くとより良いですね。防災活動や交通安全などのボランティアを通じて、地域に貢献できる自分の役割を持ってみたり、週に1~2日でもパートに出てみるのも良いでしょう。必然的に外に出る社会参加活動は、優良健康活動にもなるのです。

若い方も今から行動しましょう

若い方や中高年の方は、今はピンとこないかもしれませんが、今のうちから仕事や家庭以外の交流を持つことをお勧めします。今はSNSが普及しており、完全に他者との交流がない、という方は少ないと思います。しかし、身体活動量は確実に減っている時代ですので、運動も兼ねて外出して、いろいろ場所でさまざまな方と出会うことを心がけてみましょう。日常生活にはない経験は気分転換や脳への刺激、何より日々の活力にも繋がります。

また、外出だけでなく、これを機に一度ご自身の生活習慣全般を見直して、「このままで将来、最低限の身の回りのことは自分自身でやり続けられるか?」と考えてみてください。

忙しい現代社会において、特に働き盛りの20~50代の方は運動や栄養、口腔など、すべてにしっかりと時間をかけられないとは思いますが、ほんの少しの改善や積み重ねが高齢期に差し掛かった頃に大きな差になっているはずです。

おわりに

「将来、介護を必要としない為に!」は私の活動コンセプトでありますが、現在は超高齢社会であり、今後は多死社会に突入します。その後に人口減少となるかどうかは少子化対策次第ではあるかと思いますが、高齢化率はますます上昇していくことでしょう。介護の充実を図ることはもちろん大切ですが、一人一人がしっかり予防に目を向け、なるべく早い段階から取り組むことが、これからの世の中において特に大切になっていきます。

全6回のコラムを担当させて頂きましたが、目を通して下さった方々の介護予防を考えるきっかけになれれば幸いです。

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著者紹介

藤田 朋子(管理栄養士・健康運動指導士)
千葉県松戸市生まれ。「将来、介護・看護を必要としない身体作りを広める」をコンセプトに、介護予防の分野で幅広い世代に向けて活動中。 高齢者指導、特定保健指導の他に母子保健や執筆など活動内容は多岐にわたる。

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