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介護タクシーコラム

JPN TAXIはユニバーサルデザインなのか(前編)

タクシー

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JPN TAXIが2017年10月にデビューしてから1年と2ヶ月あまり(2019年1月執筆時)。東京都内ではかなりの確率で目にするようになりました。と同時に発売当初から懸念されていた「車いす乗車準備に時間がかかる」という点が、残念ながら「車いす乗車拒否」という事態を引き起こしてしまっています。

みんなのおでかけを応援サイトの企画・編集担当として、これまでどのようなことがあってこれからどうなるのか、そして今後なにが必要になっていくのかを含め、自分の考えをここに書き留めておきたいと思います。

ユニバーサルデザインとは?

UDタクシーについてはこのサイトのユニバーサルデザインタクシーについてで説明していますが、そもそもユニバーサルデザインとはどのようなデザインのことをいうのでしょう?調べてみました。

ユニバーサルデザイン(UD)とは

(デジタル大辞泉より)高齢であることや障害の有無などにかかわらず、すべての人が快適に利用できるように製品や建造物、生活空間などをデザインすること。アメリカのロナルド・メイス(1941-1998)が提唱した。その7原則は、

  1. だれにでも公平に利用できること。
  2. 使う上で自由度が高いこと。
  3. 使い方が簡単ですぐわかること。
  4. 必要な情報がすぐに理解できること。
  5. うっかりミスが危険につながらないデザインであること。
  6. 無理な姿勢を取ることなく、少ない力でも楽に使用できること。
  7. 近づいたり利用したりするための空間と大きさを確保すること。

すべてを完璧に満たすデザインを創ることは想像を超える難しさがあると思います。ただコラムのタイトル「JPN TAXIはユニバーサルデザインなのか」という質問について、メイス氏が存命だったらどう答えたでしょうか。

当初から指摘されていたスロープ設置にかかる時間

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東京都内はJPN TAXIの台数が急激に増えてきている

JPN TAXI発売当初より、車いす乗降の難しさは多方面から指摘がありました。10分~20分以上もかかる乗車準備に、福祉輸送を行うタクシー会社の団体、一般社団法人全国福祉輸送サービス協会の漢 二美会長から「乗務員の敬遠回避のためにJPN TAXIに車いす介助料を設定すべき」(2017.12.18東京交通新聞)という声が上がるほど、福祉輸送に携わる現場からは問題視されていました。

車いすはNV200、JPN TAXIは極力使わない

お会いするタクシー会社の方々からは、JPN TAXIで車いす乗降に対応することを極力敬遠しているという話も聞きました。もちろん乗車拒否をするというのではなく、車いすの方から依頼があった場合にはNV200を配車するという方針です。これはJPN TAXIの仕様を理解して利用客のことを考えれば当然の選択といえます。

ただ、残念なのはタクシー会社がホームページなどでJPN TAXIを紹介する際に、「車内が広い」「大きな荷物が積める」などの特長を紹介していても、なぜか「車いすのまま乗車できる」という大きな特長を紹介していない。そればかりかJPN TAXIがUDタクシーであることを明示していないタクシー会社があることです。

UDを考える上で妥協点を見誤った?

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羽田空港ターミナルを走るJPN TAXI

国土交通省が定めるUDタクシーの定義は「誰もが利用しやすい”みんなにやさしい”新タクシー車両」で、街中で呼び止めても良し予約しても良しの誰もが普通に使える一般のタクシー。ということですが、先程ご紹介したようにJPN TAXIには「車内が広い」「大きな荷物が積める」というメリットがあります。この点においてはこれまでのタクシーよりも良くなっていると誰もが感じるはずです。

TOKYO2020オリパラ開催へ間に合わせるため?

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、都市交通網の整備計画の成果を急ぐあまりにUDの妥協点を見誤ったのでしょうか?車いす乗降の利便性向上を追求せずに、荷物が多く体格の大きい外国人観光客にとって利用しやすい、燃費効率が良いなど他の機能を重視した。と指摘されてもおかしくはありません。

代替車両の選択肢が無い状況に現場からは不満の声も

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コンフォートはシェアNo1の車種だった

2017年5月に受注を終了したトヨタ・コンフォートとトヨタ・クラウンコンフォート。タクシー専用車として22年に渡りタクシー業界の主役だった車種がなくなり、代わりに登場したのがJPN TAXIでした。タクシー会社、乗務員のみなさんがJPN TAXIを語るときは必ずと言っていいほど「コンフォートと比べて…」という前置きがあります。

そこから続く言葉は人によって様々ですが、長年馴れ親しんだコンフォートに思い入れがある方がほとんどです。そこで出てくるのは、これからJPN TAXI以外に代替車両の選択肢がない、という不満の声です。2017年5月までに駆け込みでコンフォートを注文するタクシー会社や、他社がJPN TAXIに代替した状態の良いコンフォートを中古で入手するタクシー会社も少なくありません。

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コンフォートでしか乗務経験のないドライバーも多い

補助金の支給対象とはいえコストの部分で導入を見合わせているタクシー会社もありますが、コンフォートこそが「良き時代」であり、新しい時代(JPN TAXI)を受け入れられない。という現場の一部、特に高齢の方の意識がこの問題に根深く影響しているのではないでしょうか。


後編ではJPN TAXI車いす乗降問題をめぐる動きと、今後の取り組みについて私見を交えて紹介したいと思います。

JPN TAXIはユニバーサルデザインなのか(後編)を読む

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著者紹介

滝口 淳(ライター)
タクシー業界の片隅で仕事をしながら、介護福祉タクシー情報の分かりにくさを実感。障がいを持つ子どもの親として情報サイトの立ち上げを企画。現在取材活動中。

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