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ドライバーインタビュー

go out taxi 船戸さん

愛知県 春日井市

go out taxi代表の船戸さん

日が暮れるのがすっかり早くなった11月、朝から車を走らせて愛知県春日井市へ。移送業務がひと段落したgo out taxi(f.k spice株式会社)代表の船戸さんに会ってきました。

以前からSNSで活動を拝見していて、すごく興味がある介護タクシーだったので、お会いするのをとても楽しみにしていました。さらに別件のお願いもあり、たっぷり時間をいただいてしまうことに…。

地域の福祉に若い力を、そして自分だからできることを

go out taxi 事務所

まず開業の経緯を教えてください。ホームページにたびたび登場している、おじい様とおばあ様の介護がきっかけだったのでしょうか?

いえいえ、そうじゃないんですよ(笑)介護タクシー案内所のインタビューでよく見かける「家族の介護」「自分のケガや病気」といったことが開業のきっかけではなく、学生時代から人とのコミュニケーションに面白さや楽しさを感じていて、地域福祉に貢献したいという思いがあっての開業なんです。

go out taxi 事務所内

オシャレな事務所でした

そうなんですね。そういえば船戸さん、出身大学が日本福祉大学でしたよね。

地域福祉について専門的な勉強をしてきました。卒業後は社会福祉法人で10年間働いて、施設の生活相談員などを経験しました。その時に地域の高齢福祉、障害福祉にものすごく課題が多いこと、業界に若いなり手、担い手がいないことを知って「地域のために自分で介護タクシーをはじめよう!」と思ったんです。

福祉のプロとして地域のために頑張りたい!

キャラバンと船戸さん

2020年開業。翌2021年に車両台数を増やして法人化、そして訪問介護事業を開始。短期間でここまで拡大することを開業当初から考えていたのですか?

求められることにはしっかりと応えていく。そう思って始めた介護タクシー事業でしたので、開業3ヶ月で1台での営業に限界を感じて、すぐに2台目の導入を決めました。車両購入資金は開業時にやろうと決めていたクラウドファンディングを使って調達しました。

ほかの介護タクシーに移送をお願いすることもできたのですが、自分の専門性を頼って依頼してくれているお客様を、他の事業者にお願いすることは難しいと思ったので、車両とスタッフの確保で事業を拡大する道を選びました。今年始めた訪問介護事業も同じです。ニーズがあるから今もできることを広げています。

2台目のシエンタ

クラウドファンディングで購入したシエンタ

2台目のシエンタですね!開業してしばらくは依頼がなかなか来ないという話もよく聞きますが、go out taxiは開業当初から依頼が多かったのですね。

おかげさまで前職でつながったケースワーカー、ケアマネジャー、社会福祉協議会の生活支援コーディネーター、地域包括支援センターの職員の方などから紹介いただきました。私が福祉のプロとして、地域福祉に貢献したいという強い思いを持っていることを知ってくれているから、安心して依頼してもらえるのだと思います。

GO!HOME CARE
訪問介護サービスGO!HOME CARE
f.k spice株式会社
福祉と介護にスパイスを(f.k spice)

正直言って、開業に不安はありませんでしたか?

介護タクシーの営業はそう簡単なものではないと思っていたので、オリジナルのプリントウェアやグッズの制作・販売も一緒に始めました。もともとファッションに興味があったので、どうせやるなら自分の好きなことをと思い、先ほどお話ししたクラウドファンディングのリターンにも使用しました。

オリジナルのスタッフジャンパー
イラスト入りのスタッフジャンパー
go out taxiグッズ販売サイト
いろいろなアイテムを販売

地域貢献事業に本気で取り組めば仕事として返ってくる

付添いをする船戸さん

お話を聞いていると、現在のお客様は船戸さんに魅力を感じて利用されているように感じます。go out taxiの魅力ってなんでしょうか?

そうですね。いちばんの魅力は僕が地域福祉に対して思いを持っていることだと思います。福祉にかかわる人たちが「あの人は思いがある」と感じてくれるから、いろいろな相談がやってきます。もちろん僕も「地域のために頑張らせてほしいので、困っている人がいたらその人のために一緒に協力したい!」と本気で思っています。

そこまで広い視野で活動している介護タクシーは少ないと思います。こんど開かれる地域ケア会議も取り組みのひとつですよね。

はい。フードロスをなくすために地域のスーパーから廃棄予定の食品を引き取って、地域包括支援センターなどと協力して生活困窮世帯に提供する「フードパントリー」を開催する、というテーマで地域ケア会議を開催します。(2021年12月18日に市内の小学校で開催)

地域ケア会議

地域ケア会議のようす

もちろんボランティアなので収入にはなりません。お金にならない事業だけど、地域の人のためになることで信頼を得る。事業所としての信頼が高まれば必然的に介護タクシーや訪問介護事業で仕事として返ってくる。こうやって地域との絆づくりをしている介護タクシーは他にないと思います。

介護タクシーでのお出かけには99%の緊急対応が可能な専門性が必要

ケアマネジャーと長距離移送

go out taxiを利用するお客様の用途を教えてください。

急性期病院からの転院・退院が中心です。コロナ禍の開業ということもあり、お出かけの需要は少ないです。いまはコロナも少し落ち着いているということもあって、結婚式の依頼などお出かけの予約も入ってきています。今後は旅行のお手伝いなどもしたいですね。

転院・退院での利用が多いのですね。屋号のgo out taxiから、お出かけ利用が多いのかと思っていました。

よく言われます(笑)「お出かけを支援したい」「楽しいお出かけをしたい」というコンセプトの介護タクシーは結構多いと思いますが、介護タクシーを利用する要介護の方、バスや電車などの公共交通機関を一人で利用することが難しい方にとって、移動は一般の方よりも万が一のリスクがずっと高いんです。

その方たちのお出かけをサポートするということは、99%の緊急、突発的な重症、夜間の搬送などに対応できる専門性があるからできることだと思っています。それができないのであれば一般タクシーと変わりありません。それができて初めて信頼を得ることができ、「こんどは私の余暇をあなたにお願いしたい」という依頼につながるのだと思います。

飛沫防止アクリル板

飛沫防止板でコロナ対策

たしかにそうですね…。ではお客様に対して気を配られていること、車両や設備で注意していることはありますか?

これは基本ですが、声かけですね。とくに「声の温度」に注意しています。痛みのある方、終末期の方、楽しいお出かけの方…お客様の状況に合わせて口調やスピード、トーンを変えて応対しています。あと設備では種類の違うケアスロープを用意しているところです。大・中・小3種類あって、移送先の建物の状況などにあわせて使っています。

go out taxiの移送器材
豊富な移送・介助器材
ケアスロープの利用風景
ケアスロープで車いすのまま家の中へ

こういった設備がないと複数名での介助が必要になります。そうすると2名以上のヘルパーのスケジュール調整が必要で、さらに費用もかかる。もちろん安全に介助することが大前提ですが、介護の現場には緊急時など、模範演技だけでは対応できないことも数多くあります。

身体的にも経済的にも、お客様の負担を最小限に抑えかつ安楽に。1人で安全に対応するためには何ができるのかを考えてスロープを導入しました。こちらの稼働効率も上がるのでおススメです。

お客様に「ここで暮らしていてよかった」と言われることが最終目標

キャラバンとシエンタの後部

今日がちょうど開業1周年なんですよね。これからの目標を教えてください。

ホント偶然ですが、1年前の今日(11/11)にgo out taxiを開業しました。「介護の日」でもあるんですよね。今後はもっと地域のお役に立てるよう、車両台数をもう1台増やしたいです。また地域が抱える課題についても積極的に取り組んでいきたいです。

介護タクシーの仕事を通じて感じる地域の課題とは何でしょう?

福祉のプロはなかなかいない、ということですね。たとえば地域包括支援センターから要介護認定されていない、ケアマネもついていない方の依頼を受けることがあります。

この方はこれから介護・福祉のサービスにつながっていく人なのですが、今回のような突発的な需要が見落とされているのではないか、という不安があります。そういった見えないニーズを見つけ、必要なお手伝いをするために、もっと地域と関わっていきたいと思っています。

今日は長い時間ありがとうございました。最後に船戸さんの好きな言葉を教えてください。

うーん…「ちばる」ですね!沖縄の方言で「頑張る」という意味です。岡崎市で認知症の方が働く「ちばる食堂」という沖縄そば屋さんがあって、店長で介護福祉士の市川さんとは以前より交流があるのですが、店名の「ちばる」という言葉が好きです。

船戸さんとちばる食堂市川店長
船戸さん(左)と市川店長(右)
車両に貼っている「ちばってる!?」
ちばってる!?ステッカー

「ちばる」は頑張ろう!と背中を押してくれる言葉。うちの車両にも「ちばってる!?」の切り文字を貼っています。go out taxiも、ちばる食堂に負けないよう頑張って、お客様に「ここで暮らしていてよかった」と言ってもらえるようになることが最終目標です。


カンバス地のエコバッグ

お土産にエコバッグをいただきました!

地域で暮らす人のために、手助けをするために介護タクシーや訪問介護事業を立ち上げる。人も車両も増やす。船戸さんはまったく軸がぶれない、ビジョンを明確に持っている方でした。船戸さんのような方がたくさん出てきて、地域の移動について考えるようになれば、くらしの足はもっと細やかに行き届いたものになるはず。そう感じたインタビューでした。

船戸さん、長い時間本当にありがとうございました!

go out taxi代表の船戸さん

go out taxi(f.k spice株式会社)

代表取締役 船戸 敬太
1988年愛知県春日井市出身。日本福祉大学卒業後、社会福祉法人勤務を経て2020年11月にgo out taxiを開業。2021年9月f.k spice株式会社を設立。法人化とともに訪問介護事業を開始する。趣味は登山、サイクリング、ファッション。

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