ドライバーインタビュー
ケイティ物流 戸井口さん
7月頭の関東甲信地方は、あっという間に梅雨が終わって真夏の暑さです。今回は長野県佐久市にある有限会社ケイティ物流を訪問してきました。72歳・現役ドライバーで経営者の戸井口さんに、グループの介護タクシー部門を中心にインタビューしました。
車いすの人をサポートする仕事がしたかった
介護タクシーは2020年から営業開始ということですが、物流の会社が介護タクシーを始めたのはなぜでしょうか?
ずいぶん昔ですが、仕事中に車いすの方が段差で困っているのを見かけて手助けしたときに、その方が「車いすでも乗せてくれる車があればなぁ…」と言っていたのがずっと心に残っていて、いつか車いすの人の移動をサポートする仕事を始めようと思っていました。
ケイティ物流の創業は1968年(昭和43年)で、運送業はもう50年以上になりますが、介護の資格はずいぶん前に取得していました。それから斎場、寝台車、便利屋などいろいろな事業を始めて、2020年にやっと念願の介護タクシーを開業できました。
物流会社として地域のためになる仕事をする
いろいろなサービスを展開されているのですね。
物流の仕事をしていると、地域のことが見えてくるんです。少人数でお別れができる家族葬向けの斎場や生活のお困りごとを解決する便利屋。ここで暮らす人たちが必要だと思うこと、物流会社として地域のためになる仕事をすることが自分たちの責務だと思っています。
現在は介護タクシーの他に、軽ワゴンの福祉車両と10人乗りハイエースのレンタカーも始めています。旅行や日常のお出かけに活用してもらっています。
介護タクシーサービスの特長を教えてください。
福祉車両5台にケアドライバーが6名、トラックで冷凍食品や高度精密機器を運んでいるプロドライバーが乗務しているので、転院などの長距離移動には自信があります。あとはうちのコンセプトとして「車イス旅での出会い」と「重度障がい者と共に生きる」という点が特長です。
重度障がい者と共に生きよう!
ユニバーサルツーリズムと重度障がい者の送迎に力を入れているということですね。
車イス旅だからできる、家族との思い出作りに力を入れています。旅行をすることで新しい出会いがあります。その出会いが家族との思い出となるように旅行先の提案をしています。重度障がい者の送迎については、本当に困っている人たちだからこそ、支え合って生きていく必要があると思っています。
本当に困っている人…たしかにその通りです。
重度障がい者の方からは「ほかのタクシーを利用して嫌な思いをした」という声をよく聞きます。私も事故でしばらく車いす生活を経験しましたが、同じような思いをしました。重度障がい者や透析患者など、移動が必要で本当に困っている人に寄り添っているタクシー会社は少ないのが現状です。ならば自分たちはそういう人たちのために頑張ろう、と決めたのです。
いつもニコニコして話しかける
利用するお客様も障がい者の方が中心なのでしょうか?
要介護者の通院や転院、介護施設の利用も多いです。うちは台数も人員も揃っているので、透析患者も積極的に受け入れています。透析病院との契約もしているので、280名ほどの透析患者を送迎しています。あとはパラアスリートにもご利用いただいてます。
お客様への対応で心がけていることを教えてください。
いつもニコニコして話しかけることです。以前、重度障がい者のお客様を車に乗せて走り出したとき、突然大声を上げて足をバタバタとさせて動き出したので、心臓が止まるほどびっくりしたことがありました。慌てて付き添いの施設職員の方に尋ねると「すごく喜んでる!この子がここまで喜んでいるのを見たことがない!」と同じように驚いていました。
重度障がい者のなかには、全く身体を動かせなかったり、話ができない人もいます。それでも目で見て、耳で聞いて、感じているということを身をもって知ってから、すべてのお客様にニコニコ笑顔で声掛けをすることを大切にするようになりました。
介護タクシーは新しい出会いがある仕事
車に乗ってお出かけすることが嬉しかったのですね。
介護タクシーの仕事は1日に10人くらいの人と新しく出会うことができます。いろいろな出会いがあり、勉強することも多いです。これからも出会った人とのコミュニケーションを大切にしていきたいです。
今日は有難うございました。最後にケイティ物流の介護タクシーを利用される方へ、ひとことお願いします。
ケイティ物流にはプロドライバー多数在籍、全員が介護資格を取得しています。介助料は無料、メーター運賃のみでご利用いただけます。予約をお断りすることはほとんどありません。自分たちにできることは全力で対応しますので、ご利用をお待ちしております。
戸井口社長はとても面倒見の良い方で、困っている人の助けになりたいという気持ちが伝わってくるインタビューでした。また、社員とその家族のことを大切にする、経営者としての顔も垣間見ることができました。車イス旅での出会い、新しい人との出会い…運ぶという点では物流も介護タクシーも同じですが、人を運ぶことが「出会い」であると捉える感性は素晴らしいと思いました。
これから車両も人も増やしていきたいと話す戸井口社長。次世代への道筋もしっかりと作っていってほしいです。