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介護タクシーコラム

介護家族が実感!お出かけのススメvol.1 家から一歩外に出ればパラダイス!

お出かけ

空と雲

高齢になると、つい安全な家の中に閉じこもりがちになりますが、家の外にはたくさんの“いいこと”があります。これ、今年85才になる独居で認知症の母につき添ってあちこち歩きながらすごく実感すること。同じく老親を見守る子供世代のみなさんにも、ぜひおすすめしたいのです。どんな“いいこと”があるのか、お話しします。

現役世代が気づかない“外”の魅力

仕事や日常生活に追われる世代にとって外出は、さして特別なことではありません。もっといえば外は戦場、ホッとできるのは家の中。外では目的地への移動をいかに無駄なく効率よくするか、そればかり考えている気がします。だから母の散歩につき合うようになった当初は、ただあてどなく歩くだけの時間がとても苦痛だったのです。

でも母は、認知症で要介護認定を受けた78才時点ですでに散歩の達人。70代になった頃から「老後、子供(私です)に迷惑をかけたくない」と言って、せっせと散歩を続け、おかげで認知症は着々と進みつつも健脚です。

あじさい

そんな母が外出先で楽しんでいるものは…。
まずは街のいたるところに貼ってある看板やポスター。町内掲示板などには結構な情報があります。地元のホールに有名な落語家や歌手が来るとか、『認知症カフェ』への誘いとか、「電話でお金の話が出たらオレオレ詐欺!」とか。母は認知症なので情報としては覚えられませんが、好きな落語家の名前に「あら~❤」、“認知症カフェ”という言葉に「ん? 何だろう」、“オレオレ詐欺”という文字に「まあ怖い」と、心が動くわけです。飲食店の立て看板のおいしそうな料理写真には思わず立ち止まって釘付けになるし、古着屋の「10円~」のPOP広告には忘れかけた物欲が刺激されるのか、寄って行ってシャツなどを触ってみたり。生活範囲がどんどん狭くなる母にとっては貴重で小さな社会参加なのです。

街並み

そして外でしか出会えないのが“よその人”。もちろん名前も知らないすれ違うだけの人たちですが、母は実によく観察しています。特に赤ちゃんが好き。踏切などで立ち止まった時、近くに赤ちゃんを抱っこしたお母さんがいると必ず近づいていって「何か月?」などと聞きながら、かわいい手足をプニプニ触ってしまいます。若いお母さんに迷惑なのではとハラハラしますが、愛児のことを聞かれるのは嬉しいのか、案外、みなさん笑顔で返してくれます。 また若い男女が手をつないでいたりすると、すぐにあらぬ思いが巡るようで「Sちゃん(私の娘・大学生)、悪い虫がついていないだろうね」と、毎度同じセリフをつぶやきます。 同じ年配の人には、やはり鋭い目線を向けるものですね。シャキッとした姿勢でスッスと歩く人、しゃれたブラウスや花柄の杖などをギロリと見ています。いくつになってもジェラシーは、ささやかな活力になるようです(笑)。

百日紅

ILBONG NAMによるPixabayからの画像

人もまばらな住宅街では、垣根越しの庭木を拝見。春は梅、桜、沈丁花、秋は金木犀、紅葉、冬は椿、そして今、真夏は百日紅なんかが盛り。そうそう、もっと何もなくても、空を見上げれば雲の形が季節を語ってくれます。いいですよ、花や雲の刻々変わる表情に見とれるのは何とも快感なのです。こんな心地よさを知ったのは母と歩くようになってからのこと。何でも知っているようでいて、日々の生活に追われると見えていないことがたくさんありますね。

“自由”が得られるお出かけ

扉

「外出、社会参加で介護予防!」と、よく言われるようになりました。家で何もせずに過ごしていると筋力や認知機能の衰えに拍車がかかり、外に出て人と関わることで心身の健康が維持されるという研究データも数多く報告されています。車いすの高齢者が、外をひと回りしてくるとイキイキとして元気になるという介護士さんの話もよく聞きます。

外で得られるのは“自由”かもしれません。普段、時間に追われている現役世代には気づきにくいのですが、仕事や役割を引退し、多少なりとも助けてもらい受け身で生きる高齢者には自由が貴重なのです。外には360度全方向に、危険も含めたいろいろな物、人、刺激があり、興味のあるものを目線で追いかけ、歩み寄ったり、香りや風を感じたり、ワクワクしたり考え込んだりと、自分が主体になって心を動かす自由がある。取材で話を伺う老年医学の先生方が異口同音に言われるのも「心を動かすことが生きる糧になる」ということ。これは年齢問わず誰にでも、仕事に家事、子育て、介護に疲れ気味の現役世代にも必要な糧かもしれません。

だから観光名所や豪華旅行でなくてもよいのです。まずは家から一歩外へ出て、好奇心旺盛にお出かけしてみましょう!

著者イラスト

著者紹介

斉藤 直子(フリーライター)
雑誌、書籍の生活実用記事を取材・執筆。現在は、超高齢社会の人生最終章を元気で幸せに過ごすための実用情報を追求。認知症の実母を支援する立場から、医療、福祉、地域資源などを取材した小学館『女性セブン』の「伴走介護」の執筆者。

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