ドライバーインタビュー
民間救急サービス はやぶさ 喜多さん
今年の9月、徳島県小松島市を拠点に営業している民間救急サービスはやぶさの喜多さんと名古屋のイベントに参加後、宿泊先のホテルで取材させていただきました。一般社団法人全民救患者搬送協会(全民救)の徳島支局長でもある喜多さんへ患者搬送についていろいろとお話を伺いました。
目 次
地元の小松島市になかった介護タクシーを開業
喜多さんとはお互いに東京・徳島を訪問した際にお会いしているので、ご無沙汰という感じはないですね(笑)はやぶさは民間救急のイメージが強いのですが、開業当初からこの営業スタイルだったのでしょうか?
いや、最初は軽ワゴン(アトレー)で介護タクシーからスタートしたんです。2010年だったかな…当時は介護施設で生活相談員や運営に関するコンサル業をしていたのですが、地域に介護タクシーというものがなくて、それなら自分で始めようか、と「介護タクシーはやぶさ」をスタートしたのがきっかけです。
喜多さんが軽ワゴン?想像できないですね…
そうだろうね(笑)でも病院からの依頼、ストレッチャー需要にするために1ヶ月でハイエースを増車したんです。そこから救急車タイプのハイメディック(グランビア)→ハイエーススーパーロング→マイクロバス(リエッセⅡ)→ハイメディック(ハイエース)へ2台体制のまま増車と代替を繰り返して、いまの体制(ハイメディック・マイクロバス)になりました。
四国圏外の搬送に欠かせない全民救事業者との連携搬送
開業から14年でこれだけ車両を入れ替えていたら相当お金がかかったんじゃないですか?
ごっついかかった(笑)でも病院からの搬送需要に応えることで、仕事は徐々に増えていきました。いま思えばいろいろ試行錯誤した設備投資が、現在のはやぶさを作ってくれているのかなと感じてます。
それでは、民間救急サービスはやぶさの特長をお願いします。
最も大きな特長は全民救メンバーで行なう連携搬送です。徳島を含む四国から関東・関西・九州などへ長距離搬送を行う場合、船や飛行機の移動が必要になってきます。搬送先で患者さんを安心して任せることができる全民救加盟事業者がいることは、搬送においていちばん重要なポイントです。
おっしゃる通り医療依存度が高い方を搬送する場合は、連携する事業者のレベルがポイントになりますよね…ちなみにはやぶさが全民救に加盟したのはいつ頃ですか?
開業して6年後、2017年に連携事業所に登録して、2018年に入会しました。最初のハイメディック(グランビア)は全民救に入会した当初、全民救の理事長が使っていた車両を譲ってもらったんです。そこから5年以上全民救で活動していて、昨年2月には全民救徳島支局として地元の小松島市と災害協定を結びました。さらに今年の10月には徳島県と「大規模災害時及び感染症まん延時における傷病者等の搬送に関する協定」を結ぶことができました。
行政と民間の災害協定はこれからもっと必要とされてきますよね…あと喜多さん、はやぶさはマイクロバスを所有している全国でも数少ない事業者ですが、このあたりも特長ですよね?
そうだね…小旅行や荷物の多い県外の転院搬送など、スペースが必要な移動に適してます。車いすがゆとりをもって3台乗車可能なので、特別支援学校の修学旅行などにも利用できます。マルチに使えるところがマイクロバスのメリットですね。
搬送困難な依頼にも臨機応変に対応
民間救急サービスはやぶさの利用者はどのような方が多いのですか?
転院や搬送が困難なケースの依頼、交通事故の傷病者搬送など、民間救急としての利用がほとんどです。一般的な通院やお出かけは少ないですね。あとは災害時の被災地患者搬送での利用もあります。今年1月には能登半島地震の被災地患者搬送に全民救メンバーとして応援に行ってました。
要介護者や障がい者の移送よりも難しいケースが多いのですね。実際の対応ではどういった点に気をつけていますか?
介護福祉士の資格と病院勤務の経験があるので、資格と経験を活かした臨機応変な対応をいつも心がけてます。どうすれば安全に搬送できるか、最善策をいつも模索しています。あとは積極的に災害訓練に参加することですかね。消防の救命士やドクターとつながりを持っておくことで、災害発生時にスムーズに連携することができるんです。
自宅で看取りたい…家族と本人の思いを乗せた搬送
これまで行った搬送のなかで印象に残っていることを教えてください。
緩和ケアの方をホスピスから自宅へ搬送した時のことですね。病院から緊急の依頼で向かったところ、「自宅で看取りたい」というご家族からの依頼だったことが分かり、病院のスタッフに確認のうえ自宅まで搬送しました。何とか無事に送り届けることができて、ご家族から病院へ「とても丁寧に送っていただいた」という感謝の言葉をいただいたのは嬉しかったです。
状況次第では搬送中に万が一のことが起こる可能性があったんですよね…難しい搬送だったと思います。
自分たちの仕事はこういった難しいケースがほとんどで、介護タクシーと消防救急車の中間のような需要に応えているのが現状です。正直なところ印象に残っている搬送ばかりですよ。
できること、望むこと、すべきこと
突然話が変わりますが、喜多さんが大事にしてる言葉って何かありますか?
うーん…「できること、望むこと、すべきこと」かな。アニメの中に出てくる言葉だけど(笑)できることは「供給」、望むことは「需要」、すべきことは需要と供給を把握して何をしなければならないのかを見極めること。そう考えてます。これは災害発生時の支援活動の在り方と同じなんですよね。
確かに!被災地に向けて支援できること、被災地で必要としていることをマッチングしないと本当に必要な支援(=すべきこと)が見えてこないですよね…
そう。だから全民救として行政と連携した活動ができるように積極的に災害協定を締結しています。今後は全国に拡大していきたいと思っています。
今日は長い時間有難うございました。最後に民間救急サービスはやぶさをご利用いただく方へメッセージをお願いします。
民間救急サービスはやぶさは、全民救の一員として質の高い搬送を提供しています。災害発生時は被災地応援に向かいますので、長期間対応できない場合があります。申し訳ございませんが、ご了承ください…こんな感じでいいかな?
バッチリですよ(笑)
喜多さんが徳島支局長を務める一般社団法人全民救患者搬送協会は、9月11日付でDMAT(災害派遣医療チーム)事務局と連携協力の協定を結びました。災害時はもちろんのこと、新型コロナウイルスのような感染症患者の搬送にも対応できる民間救急の需要は、今後さらに高まってくるでしょう。
災害時の患者搬送のためにすべきことはなにか。それを見極めるためには、まず全国の搬送事業者が「できること」をしっかりと把握することが必要なのだとあらためて感じました。