ドライバーインタビュー
東京メディ・ケア移送サービス 長井さん
寒さも本格的になってきた12月、東京都練馬区にある東京メディ・ケア移送サービス(ワン・ツウ・ワンパートナーズ)の事務所を訪問してきました。患者等搬送乗務員として呼吸器搬送を得意とする代表の長井さんは、納得の経歴と意外な趣味をお持ちの方でした。
目 次
病院からの相談で民間救急を知る
長年医療機器メーカーにお勤めだったと聞いていますが、民間救急・介護タクシーを始めるきっかけはどんな事だったのでしょうか?
仕事の関係で私が担当している人工呼吸器を導入している病院を訪問することが良くあったのですが、病院から「人工呼吸器を使って患者を搬送したいのだけれど、どうすればよいのか」という相談を受けて、対応したのがきっかけでした。
そもそも病院から相談があるくらい、人工呼吸器のプロフェッショナルだったのですね!
そうなんです(笑)病院で使用している呼吸器をそのまま移送には使えなかったので、手順を説明して当日は搬送用に呼吸器をセッティングしました。その時はじめて民間救急を見て「こういう仕事があるんだ」と興味を持って、いろいろ調べているうちに自分がやりたくなっちゃったんです。
呼吸器搬送のノウハウが強み
医療機器業界でのキャリアを民間救急(患者搬送)に活かそうと。
当時は呼吸器を使った搬送に対応している事業者はほとんどなかったので、人工呼吸器で30年のキャリアがある自分が始めれば大きな強みになると思ったんです。まさにそこが開業のきっかけでした。
人工呼吸器についての知識と経験が搬送のノウハウとなって、東京メディ・ケア移送サービスの強みになっているのですね。
開業は2018年11月ですが、搬送・移送の技術と経験を早く身につけたくて首都圏で大手の介護タクシーグループに加盟しました。人工呼吸器だけでなく、医療搬送に必要な資機材が揃っているのもうちの強みになっています。
医師・看護師が同乗する機会が多い
となると利用客は医療処置が必要な方が中心なのでしょうか?
そうですね。一般の介護タクシーよりも入院や転院で医師や看護師に同乗してもらうケースが多いと思います。もちろん通院やお出かけの依頼もありますので、車両2台・ケアドライバー2名、女性介助員1名体制で医療系、介護系を効率よく振り分けています。
同じように複数台所有している介護タクシーとはコンセプトが違いますね。
特に私が担当する医療系の搬送については、もっと専門性を高めて需要に対応できるようにしたいと思っています。少ないが需要がある、でも対応できる事業者がいない。という領域においてより力を発揮できるように試行錯誤しています。
感染症対策も万全に、車両にはAEDを常設
お客様が安心して快適に利用できるサービスはありますか?
うーん…そうですねぇ。これはサービスには当てはまらないかもしれませんが、搬送時の感染症対策を万全に行っています。医療系の大学を出て医療機器メーカーとして病院に出入りしていた経験から、押さえておくべき対策は十分に心得ていました。
これまで相当数のコロナ患者の搬送を担当していますが、スタッフ全員コロナに罹患したことがありません。コロナが5類感染症になった今でも継続しています。これはお客様や関係者を感染症から守り、安全な搬送を行っているという裏付けです。
それは家族も安心できます。医療的な視点から搬送の安全を考えられているのですね。
その点でいうと搬送中の「もしも」に対応できるよう、車両にAEDを常設しているのもサービスの1つです。じつは同業者や一般の方向けに前職で製造しているAEDの販売・レンタルも取り扱っているんです。
「癒される対応だった」とよろこびの声
お客様からの反響でうれしかったことを教えてください。
東京から神戸の有馬温泉病院まで転院搬送を行ったとき、お客様から「長井さんには癒される対応をしていただいた」とよろこびの声をいただいたことですね。
お母様を娘さんのご自宅近くの病院まで安全にお送りするミッションだったのですが、受入れ先の病院の変更や感染症の影響などいくつかの事情が重なって、予定よりも約3ヶ月遅れてしまいましたが、あきらめずに娘さんと一緒になって、転院のハードルをクリアできたことがお褒めの言葉をいただけた理由だと思います。
有志による研究会を立ち上げ
ホームページに「医療搬送研究会」というページがありますが、どういう会なのでしょうか?
コロナや搬送業務でなかなか活動できていませんが、都内を中心に患者等搬送事業者(民間救急)が有志で集まって医療搬送について勉強する会を立ち上げました。これからアクティブに活動してきたいと思っています。
以前取材させていただいた勉強会ですね。次回の開催もぜひ参加させてください!
有難うございます。いろいろ企画を考えていますので、開催する時はまた声をかけますね。
趣味はスポーツ全般、スキーはインストラクターの資格を取得
ちょっと話題を変えて長井さんの趣味について教えていただけますか?
意外に思うかも知れないけど、身体を動かすことが好きで、若い頃からずっとスキーをやっています。全日本スキー連盟の指導員資格(俗に正指)を取得しています。指導員はスキー検定1級→準指導員→(正)指導員の順で検定に合格しないと認定されないので、取得が難しいんです。その他にもプライズ検定のテクニカルプライズ(スキー検定1級→テクニカル→クラウン)も持っています。
驚きです!勝手なイメージですがてっきり文科系だと思ってました(笑)
でしょう(笑)じつはアウトドア派なんです。スキーのほかにクライミングやモーターパラグライダーもやってます。キャンプも好きですね。今は仕事でなかなかできないのですが…。
車両台数を増やして長距離搬送の需要に応える
東京メディ・ケア移送サービスの利用を検討されている方にひとことお願いします。
呼吸器搬送は数が少ないけど需要がある、と最初に説明しましたが、実情は徐々に増えてきています。医療現場のニーズに的確に応えることと、利用する患者様の経済的負担をできるだけ軽くすること。この2点を大切に営業しております。必要なときはぜひお声がけください。
今日は長い間ありがとうございました。最後にちょっと構想をお話いただけますか?
近々3台目の車両(ハイエーススーパーロング)を導入します。民間救急専用にカスタマイズして、長距離の転院搬送に対応できる体制を作っていきます。あとは昨年開始した搬送用医療機器のレンタル事業を通じて民間救急による呼吸器搬送を育てていきたいと思っています。
落ち着いた口調の中にも医療搬送に対する思いが伝わってくるインタビューでした。搬送用医療機器はそれ自体が高額で、保守点検にも多額の費用がかかるそうです。医療機器を持っていても知識が乏しく、点検も不十分という民間救急もあるそうで、長井さんはそれを懸念しています。「正しい知識を同業者のみなさんに知って欲しい」と話していたのが印象的でした。