ドライバーインタビュー
みや介護 小平さん
北関東の空っ風が吹く12月の栃木県宇都宮市。みや介護(有限会社うつのみや介護タクシー)の小平社長にお話しを伺いました。1BOXからミニバン、軽ワゴンまで合計11台を保有する(取材当時)みや介護は、地域の介護福祉輸送を支える大切な役割を担っていました。
目 次
栃木県初の介護タクシーとしてスタート
みや介護はいつ頃始められたのでしょうか?
平成17年(2005年)の4月に栃木県内で初の介護タクシー(福祉輸送限定)として開業しました。開業時は私と他の3事業者で計4台、当時は介護タクシーなんて知られていなかったので病院に営業しても門前払いが続きました。そこで同じ年の7月に法人化、10月に介護保険指定事業所(訪問介護)となり、介護保険適用の移送サービスを開始しました。
最初に始めるという点ではご苦労があったのですね・・・。現在はどのような体制で営業されていますか?
レジアスエースが3台、ヴォクシーが4台、ラクティスが2台(いずれもトヨタ)、あと立位可能な方向けの軽ワゴンでピクシススペース(トヨタ)とワゴンR(スズキ)が1台ずつで、合計11台です。ドライバー10名(男性5名・女性5名)を合わせて25名のスタッフで営業しています。(※取材当時)
1台だと1の仕事、2台だと3の仕事ができる
それはすごいですね!介護保険指定事業所ということは、2種免許の要らない有償運送(いわゆるヘルパー輸送)をされているのでしょうか?
いいえ、11台すべてタクシー(緑・黒ナンバー)として登録しています。お客様に移動の安全と安心を提供するには有償運送(白・黄ナンバー)よりもタクシーの方が良いと思ったからです。なので私を含め当社のドライバーは全員二種免許を取得しています。もちろん介護タクシー(福祉輸送限定)に必要な介護資格も取得しています。
お客様も分かりやすくて良いですね。やはり続けていくうちに需要が多くなり、台数が足らなくなったのですか?
そうですね。障がい者の移送や付き添いも行っているので、車も人も足りなくなりました。車は2台になるとできる仕事が1+1=2ではなく3になるんです。台数が増えると通院などの帰りを近くにいる車で対応するといった配車ができるようになります。これが当社の大きな強みですね。1台だとその場で待機するか、その場を離れてしまうとお客様を長くお待たせすることになりかねません。
口コミでの依頼と一貫した移動サービス
たしかに通院帰りに長い時間待つのはお客様にとっても負担になりますよね。ではタクシーの車両台数以外で、みや介護のセールスポイントを教えてください。
うちには営業用のパンフレットがなく、依頼はすべて口コミで入ってきます。あるのは通院などで行きのお客様に「帰るときにこちらに電話してくださいね」といってお渡しするカードだけです。また大手旅行会社のバリアフリー旅行の運行担当もしています。このシーズンだと福祉施設の忘年会などの送迎依頼も入ってきます。
台数が多いと団体のお出かけもまとめてお願いできますよね。先ほど障がい者の付き添いサービスも行っていると聞きましましたが、どのような内容なのでしょうか?
外出先での移動支援や重度視覚障がい者に対する同行援護などです。当社スタッフが同乗して対応しますので、送迎から外出先の支援まで一貫して行うことができます。これも大きな特徴のひとつですね。
制服は動きやすいジャージを採用、運行管理も徹底
お客様に便利で快適に使ってもらうように工夫していることを教えてください。
お客様や病院・施設の関係者が見つけやすいように制服はジャージにしています。私服だと一般の方と区別がつきにくく、ケーシーやスクラブを着用していると医療関係者と間違われることがあります。そこでスタッフ全員動きやすいジャージを着用するようにしました。
また運行管理を円滑にするために、予約受付簿で予約を管理しています。お客様の状態、終了予定時刻など必要な項目を確認して記録しておくと、帰りのお迎え車両の手配や次回予約の受付もスムーズになります。
安心・安全のために資格取得と教育に力を注ぐ
運行台数が多いだけあって、利用者目線の工夫がしっかりとされていますね。ところでタクシーを5台以上保有しているということは運行管理者や整備管理者の選任も必要ですよね?
その通りです。運行管理者と整備管理者を2名ずつ選任しています(取材当時)。当社ではその他にもお客様の安心・安全のために必要な資格を積極的に取得するよう支援しています。現在は介護職員初任者研修(ヘルパー2級)修了者以外に、介護支援専門員(ケアマネジャー)4名、介護福祉士10名、同行援護従業者養成研修修了者12名、大型二種免許取得者4名と多くのスタッフがより専門性の高い資格を取得しています。
震災後の移送、被災地への思い
お客様とのエピソードで印象に残ってることはありますか?
2011年に発生した東日本大震災後、被災地からの転院、転所の移送は今でも強く印象に残っています。毎週のように依頼があり、福島第一原発の建屋が見えるところを何度も走りました。社員に万が一のことがあってはならないと、被災地からの移送はすべて私が担当しました。
みなさん高齢の方で、恐らくもう住み慣れた場所には帰って来れないと思っているのでしょう。「最後に住んでいた家や町を見て行きたい」といって涙を流す方も多くいらっしゃいました。とても心が痛く、忘れられない日々でした。1日も早い復興を願うばかりです。
大変なご経験だと思いますが、一番必要とされている時に最大限のお仕事で支援をされていたのですね。
はい。そこでの助け合いや地域の連携を目の当たりにして、自分たちも移動にお困りの方をあらゆる手段で支援していかなければと考えるようになりました。地域のタクシー会社や福祉バス会社などとの連携もそのひとつです。自分たちの持っている力で解決できないことは、同業者を含め他の事業者と連携して解決していくべきだと思っています。
すべての外出を支援できる介護タクシー
いろいろとお話しいただき有難うございます。最後にみや介護の利用を検討されている方へひとことお願いします。
私たちは、日々ご高齢の方やお身体の不自由な方とかかわっています。多くの方に介護保険を使ったサービスをご利用いただき、訪問介護や外出先での介助、その他の支援など、外出に関わるほぼすべての対応が可能です。専門知識を持ったスタッフ、女性ドライバーも在籍していますので、どんなことでもご相談ください。
最初は台数の多さに圧倒された事業所訪問でしたが、その経験値をサービス向上に大きく役立てている点が素晴らしいと思いました。小平さんは昔から地域の方に「困った時の小平さん」といわれ頼られていたそうです。介護タクシーのお仕事は天職なのかも知れませんね。これからも頑張ってほしいです。