介護タクシーコラム
介護タクシーで知っておきたい介助のはなし〈階段介助編〉
ずっと前からお話ししたかった介助のはなし。今年は時間の許す限り少しずつ書いていきたいと思います。第1弾は車いすに乗ったまま階段を昇り降りする階段介助についてです。一見簡単そうに見えるんですが、じつはすごく難しいんです。
目 次
そもそも階段介助とは?
エレベーターの無い集合住宅や自宅玄関前、外出先などにある階段を車いすに乗ったままの状態でケアドライバーが昇り降りしてくれる介助です。階段しかない場所で車いすを降りて移動ができない方にとって、頼りになるサービスです。
階段介助には訓練と技術が必要
私も何度か階段介助の練習に立ち会ったことがあるのですが、実際に車いすに乗せてもらうとケアドライバーによって技術の差が結構大きいなぁ、と感じます。大切なお客様を安全に介助するためには訓練が必要なことが良く分かります。
階段介助の紹介動画(介護タクシーチャンネル)
訓練で技術を習得したケアドライバーはこんな感じで階段介助を行います。簡単そうに見えるのですが、やってみようとすると到底できるものではありません。左右にガタガタ揺れてしまったり足が挟まってしまったり…身体に変な力が入ってしまって、1回で相当疲れました(根性なしでスミマセン…)
階段介助ってどのくらい大変なの?
厚生労働省が毎年行っている「国民健康・栄養調査」(令和元年 ※令和2年・3年はコロナの影響により調査中止)によると、80歳以上男性の平均体重が60.1kg、女性の平均体重は48.6kgで、これをモノに例えると200~300Lの冷蔵庫の重量と同じくらいになります。ちょっと無理やりですが、車いすに乗るとこんなイメージ(汗)
ケアドライバーが介助するのは動かない冷蔵庫ではなく人間です。介助中に不測の事態が起こらないよう十分に気を配り、利用者が不安を感じないよう丁寧にご案内する必要があります。
安全確保のために2名体制をとることも
階段介助を行う場所の状況や利用客の身体状況、特に体重により2名体制(場合によっては3名以上)で介助を行う場合があります。これはケアドライバーが安全・確実に介助するために必要と判断した時の対応になります。2名介助料金が必要になりますが、事前に説明があった場合は2名対応をお願いした方が安心です。
2023.02.06追記
介護タクシーによって階段介助は2名以上の対応が必須という場合もあります。
階段昇降機を使った階段介助
階段昇降機を所有している介護タクシーも複数あります。車いすのまま、もしくは昇降機に乗り換えて階段を昇り降りします。電動式なので女性のケアドライバーでも1名で安全に介助することができます。階段昇降機は高額な機械なので、人力の介助と同じように階段介助料が発生します。
階段介助の料金
階段介助がどのようなものか分かったところで、気になるのは料金ですよね。介護タクシー案内所に掲載している介護タクシーの階段介助料を調べてみました(全部は大変なので一部を抜粋しました)。料金設定は概ね1階(フロア)単位、介助料は1階あたり1,000円または1,100円が最も多かったです。
階段介助の料金例(参考)
1階(フロア)当たりの介助料 | 1,000円~2,000円 | 1段あたりの介助料 | 100円~200円 |
---|---|
2名以上対応の介助料(1名追加につき) | 2,000円~5,000円 |
立位可能な方の階段介助料 | 500円~1,000円 |
5段以上を1階分としているところが多く、1段単位で料金を設定しているところもありました。その他に3階まで無料、10段まで1,100円、屋内と屋外で異なる料金設定など、料金体系がいろいろありすぎて…これは聞いてみないと分からないですね。ホームページの料金表を見て自分で判断するのは危険かも…。
上がり框(かまち)やスロープは1段なの?
玄関の入り口まで階段が4段あって、上がり框(かまち)が1段あった場合の階段介助は1階(フロア)分になるの?という質問については、介護タクシーによって回答が異なります。階段なのか段差なのか、1段の高さによっても判断が異なるようです。
低い階段(数段の段差)は段差スロープを使って対応している事業者もあります。一般的に段差スロープを使う場合は、器材使用料が発生します。いずれにせよ階段や段差を介助してもらいたい場合は、介護タクシーに相談して料金を確認するのがベストです。
階段介助をお願いする時の注意点
ケアドライバーにご自宅や施設など、階段介助が必要な場所の状況をできるだけ詳しく伝えましょう。詳細が把握できるとケアドライバーの方で必要な資機材や人員を準備して向かうことができます。
チェックしておきたい内容
- 介助が必要な階数(ご自宅が何階にあるのか)と1階あたりの段数
- 1段の高さ、奥行き、横幅
- 踊り場の有無と広さ
- 屋根の有無(雨天対策が必要か)
- 車いすの種別(電動・自走)と重さ
- 介助が必要な方の体重
- その他ケアドライバーからの確認事項
よくあるケースが利用者の体重申告が異なる場合です。1名で対応可能と判断して向かったところ、利用者の体重が申告よりも大きく、ひとりでは対応できなかったということもあるそうです。体重はできるだけ正確に(誤差3kg以内程度で)申告した方が良さそうです。
ご家族や付き添いの方のサポートが必要な場合も
費用を抑えながら安全を確保するために、ケアドライバーがご家族や付き添いの方にお手伝いをお願いする場合もあります。その際は自分たちで対応できるかどうか、無理のない判断をしてください。少しでも難しいと思ったら手伝いなしで対応してもらうようあらためて相談してみてください。
2023.02.06追記
安全上、ご家族や付き添いの方のサポートをNGにしている介護タクシーもあります。担当ケアドライバーからの指示には必ず従ってください。
安心して階段介助をお願いできる業者を見つけるには?
移送をお願いする介護タクシーのケアドライバーにどの程度の介護技術があるのかを判断するのはかなり難しいです。ホームページで階段介助に対応しているか、写真や動画で階段介助を紹介しているかを確認してみると良いかもしれません。
相談してお願いできそうかを判断する
いちばん確実なのは、やはり介護タクシーに相談して判断することです。建物の状況や利用者の身体状況をしっかり説明したうえで、ケアドライバーから「大丈夫ですよ」と言ってもらえることが何よりも安心です。
またケアドライバーからの確認事項に回答しておくと、正確な介助料金を提示してもらえます。必要な場合は建物の状況を写真で撮影してLINEやメールで送っておくと良いでしょう。
階段介助は訓練に基づく技術を習得したケアドライバーが安全確認のうえ行っています。決してマネをしないでください。またケアドライバーの皆様には、使用する車いすの性能、メンテナンス状況を十分に確認のうえ、お客様の身体状況に合わせた介助をお願いします。