介護タクシーコラム
JPN TAXI運転手さんの声を聞きたい ~車いすユーザーより~
今回のコラムは介護タクシー案内所へ連絡をいただいた、名古屋市在住の車いすユーザーSさんからのメールをもとに掲載しています。話題のJPN TAXIについて、利用者目線かつ客観的に車いす乗降問題について語られています。
目 次
JPN TAXIについて勉強するうちに…
ジャパンタクシーについて取材されたコラムをよく読ませていただいています。とても参考になります。私はJIS規格の電動車いすを使用していて、ジャパンタクシーの試乗会や勉強会にも参加しています。ただ、障がい当事者側の声、メーカーであるトヨタの考えは聞けても、タクシー運転手さんの声を聞く機会がほぼありません。
私は当初、ジャパンタクシーに電動車いすで乗車できるかどうか心配でしたが、実際に乗車できると分かってからは、街中で運転手さんが対応するにはあまりに作業が煩雑で難しいだろうと思うようになりました。
車いす介助は運転手さんに負担が大きいのでは?
ジャパンタクシーは乗車拒否問題が起きるなどして、ハード面の改善や運転手さんの研修義務化、対応しない事業者は補助金が利用できないとニュースでみました。これでは流しのタクシーの運転手さんの仕事は増える一方です。
今までは折りたたんだ手動車いすをトランクに載せ(これも負担ではある)、車いすから降りて人は別に乗るという限定的な対応でした。ジャパンタクシーは車内のスペースをつくり、車内で車いすの切り返し介助が必要で、運転手さんの身体状況や高齢化などにより誰でも可能というわけではないと思います。さらに障害者割引や福祉タクシー券利用時の計算などで時間も手間も取られてしまいます。
現場の運転手さんの本音が把握できていたのか
研修が義務化されてもすべてがうまくいくわけではなく、双方の置かれている状況を知り理解することも必要になると思います。ジャパンタクシーが導入されるとタクシー運転手さんはこれまでと違った車いす対応をすることになる、といったことが開発段階からメーカーと事業者側で共有されていたのか疑問を感じます。
トヨタは開発工程でヒアリング調査を行ったいうことですが、実際と合っていないものになってしまったのはなぜでしょう?現場の運転手さんの本音を把握されていなかったのではないかと感じます。
流しのJPN TAXI利用には抵抗がある
日本交通 半田さんのような資格を持った人に予約時に依頼できるといいなぁと思います。流しのタクシーを利用するのはいろいろ考えてしまい抵抗があります。
名古屋市は地下鉄にワンルート(エレベーター設置やスロープ介助など入口からホームまで段差のない移動ルートを最低一つ確保された状態)が整備され、日常の外出は私は地下鉄と名古屋市リフトカー制度を利用してやりくりしていますが、高齢化した親の通院や入院に私も同行するので、車いすで乗れるタクシーが予約しやすくなってもらえると助かります。なのでジャパンタクシーには期待していたのですが…。
起こるべくして起こった問題
2020東京オリンピック・パラリンピックに不本意?ながらジャパンタクシーは組み込まれ、補助金もついてさらにはスロープ改善など対策が講じられていますが、起こるべくして起こった問題に、場当たり的な対応を迫られているような虚しさを感じます。この問題について多くのタクシー運転手さんの声を聞きたい、そう思っています。
Sさんは介護タクシーの利用時の感想やドライバーとの会話の内容など、車いすユーザーの目線でたくさんの情報を提供してくれています。主観で見ることなく、相手の立場や状況も考えてJPN TAXIのことを捉えていて、私自身とても参考になりました。
ユニバーサルデザインは誰にとっても100点満点という意味ではありません。より誰もが使いやすくなるように、Sさんのおっしゃる通り関係各位が多くの運転手さんの声を聞き、そして多くの利用者の声を聞き、互いに理解を深めていく必要があるのだと思います。