介護タクシーコラム
予約センターが利用者満足につながる
予約センターを作りたいんです!
インタビュー冒頭に熱っぽく話し始めた北海道札幌市の介護タクシーアイフット橋場所長。首都圏を中心に全国の介護タクシー事業者から話を聞いてきた私としては、その言葉の意味がとても良く分かりました。
全国で福祉輸送限定事業を行っている事業者は10,148社(H28.3 国土交通省)、私見ですがその9割近くが個人事業主ではないでしょうか。一般法人タクシーのように数台を運行管理者が管理するのではなく、あくまでも一人親方なのです。
予約センターから複数の介護タクシーを配車する。そうすることで利用者の利便性は上がります。橋場所長のお話から、同じ思いの事業者は全国に多くいることを確信しました。
事業者が集まって予約センターを作るメリット
介護タクシーを利用したくても「どこに連絡すればよいか分からない」、連絡しても「電話が通じない」「予約で埋まっている」ことが多いようです。ネットで検索すると事業者は見つかるのですが、各事業者の保有台数は少なく、1~2台のところがほとんど。利用者は自分の希望に合った事業者なのかと不安に思いながら1件ずつ連絡をしてみるのです。
ホームページを見ても料金はそれぞれバラバラ。内容が分かりにくい場合もあるので、探す方も一苦労です。「104」で紹介してもらっても希望日に予約で埋まっていて利用ができないことも…。そんな不安を解消する予約センターには、利用者にとってどんなメリットがあるのでしょう?
予約の取りやすい配車環境
まず第一に配車できる台数が増えるということは、予約に対応しやすくなるということです。位置情報に加えて移送中、待機中、空車中など、各車両の動態管理が可能になれば、病院までの行きは○○介護タクシー、帰りは××介護タクシーという対応も可能になります。つまり効率がアップするということですね。
料金の統一
一般タクシーも地域やタクシー会社によって料金が異なる場合がありますが、自動認可運賃、公定幅運賃ともに一定の運賃幅を設けているので事業者ごとに大きな差はありません。介護タクシーの場合もメーター運賃部分は同じです(介護保険適用、福祉有償運送を除く)。ただ事業者によって「介助料」や「機材レンタル料」が大きく異なり、料金を分かりにくくさせています。
サービスの向上
介護技術、運転技術、夜間対応、営業情報の共有、車両点検整備の一元化などで利用者にもっと安全で便利なサービスを提供できるようになります。グループを作ることによって研修などでお互いを高め合うことができ、サービスの向上につながります。
仲間を募集している団体も多い
全国を見渡しても予約センターを設置している介護タクシーグループは多くはありません。個人事業主が集まってグループを作っている場合もありますが、電話番号が事業者の連絡先となっていることが多く、実際にコールセンターを運営している車両規模の大きいグループはほとんどないと思います。
実際に加盟事業者を募集しているグループも多いです。グループの運営には事業者の費用負担が必要になりますが、このようなグループが少しずつ増えて予約センターを運営できるようになっていくことが利用者の利便性向上につながるのだと思います。
お客様を「取った」「取られた」ではなく利用者を第一に
個人事業主として売り上げを確保していくためには営業努力が必要です。もちろん同業他社との競争も厳しくなってくることもあるでしょう。とはいえ同業者で手を取り合うことを拒んでいては今後需要が増加するであろう介護タクシーの利便性向上は期待できません。
一般タクシーの個人事業主、いわゆる個人タクシーは全国の約93%が団体に加盟しています。携帯電話やインターネットが普及する以前からの話ですが、今もって団体が維持されているのは「利用者の利便性向上」と「相互扶助」を目的としているからです。
現代はインターネットで集客ができる時代。やり方によってはそれなりに満足できる収入を得ることができるのかも知れません。ただもう少しだけ踏み込んで、外出できない高齢者、障がい者の方が一人でも少なくなるように、事業者同士の連携を模索する必要があるのではないでしょうか。
介護タクシーが地域交通を支えていく
さらなる高齢化に向かい、移動に車いすが必要な方が増えていきます。過疎化が進み公共交通機関のインフラがなくなる「交通空白地域」ができている今の社会で、介護タクシー・福祉タクシーが地域交通で担う役割は大きくなっていくはずです。交通事業者という大きな枠の中で連携を取りながら、誰もが気軽にお出かけできる社会を創ってほしいです。