介護タクシーコラム
介護予防vol.3 運動習慣をつけてロコモティブシンドロームを予防しよう(後編)
みなさんこんにちは。介護予防Vol.2では、運動の種類などについてお伝えしましたが、今回は「筋肉」と「おすすめの筋トレ種目」に焦点を当てていきます。
介護予防vol.2 運動習慣をつけてロコモティブシンドロームを予防しよう(前編)を読む
目 次
筋力低下は30代から本格的に始まります
30代といいますと、社会に出て10年ほど経ち、仕事面において主戦力として活躍をされたり、結婚や女性でしたら妊娠・出産・育児など、ライフステージに大きな変化がある方が多いと思われます。日々の生活が目まぐるしく過ぎていきがちですので、ある日何気ないことがきっかけで筋力や体力の低下を自覚される方も多いのではないかと思います。
上のグラフにもありますように、部位にもよりますが、筋力は大体30歳を過ぎた頃から低下してしまいます。特に大腿四頭筋、腹直筋、上腕三頭筋はほぼ右肩下がりです。筋力と筋肉量には相関関係があり、基本的に筋力の高い人は筋肉量が多いということになります。つまり、加齢と共に筋力が低下するということは、筋肉量も低下してしまうということになります。
筋肉は絶えず体内で合成と分解を繰り返していますが、加齢と共に分解作用が優位になってしまいます(サルコペニアという現象になります)。そのため、筋力低下は自然の成り行きでもありますが、その低下を緩やかにすることが大切なのです。
それぞれの筋肉の部位と基本的な役割
大腿四頭筋(だいたいしとうきん)
太腿前面。日常生活において、膝をまっすぐ伸ばしたり、立ち上がりや歩行、走行時に膝を伸展させる働きがあります。
腹直筋(ふくちょくきん)
腹部で、俗にシックスパックと呼ばれる部位。上半身を前に倒したり、寝ている状態から上半身を起こす時、低いイスから立ち上がる際の初動時に使われます。また、姿勢を保持する働きもあります。腹圧を上げ、排便、咳、分娩時の補助としても使われます。
上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)
力こぶができる部位の反対側(俗にいう「振り袖」部分)です。肘を伸ばす動作(ボールを投げたり、ドアを前に押して開ける等)をします。
ウォーキングだけでは足りません
筋肉はひとつの塊ではなく、筋線維の束が集まって作られていますが、その性質によって「遅筋」と「速筋」に分けられます。それぞれの特徴を説明しましょう。
- 遅筋(赤筋)
収縮速度が遅く、長時間収縮し続けることが可能。持続的な運動に適する。 - 速筋(白筋)
収縮速度が短く、素早く力を発揮できる。瞬間的にパワーを発する運動に適する。
※なお、厳密にいいますと、その他にも遅筋と速筋の中間の性質をもつ筋線維もありますが、今回は割愛させていただきました。
じつは遅筋と速筋で、低下しやすいのは速筋の方なのです。ですので、加齢とともに素早い動作がしにくくなったり、転倒しそうになった時にとっさに脚が出なかったり、出たとしてもしっかり踏ん張れないのです。
速筋は瞬間的にパワーを発する時に使う筋肉なので、ウォーキングなどの有酸素運動では優位に働きませんが、適切な筋トレでしっかり使う筋肉になります。ですので、ウォーキングなどの有酸素運動は脂肪燃焼や心肺機能の向上、認知症予防の観点からも大切ですが、速筋を優位に働かせる筋トレも大切になっていきます。
日常生活でできる運動、トレーニング種目
それでは、どんなトレーニングをすれば良いのか・・・ということになりますが、オススメしたい種目は多岐にわたる為、こちらでは2種目お伝えしたいと思います。
(1)スクワット
大腿四頭筋や大殿筋など、下半身の主要筋肉を鍛えるトレーニングになります。バリエーションは色々ありますが、基本的に「膝とつま先が同じ方向に向いた状態で行う」「膝がつま先より前に出過ぎないようにする」「背中は丸めず、やや前傾姿勢で行う」ことが大切です。
なお、写真では膝を深く曲げておりますが、膝や股関節の状態などと相談しながら丁度良い角度で実施しましょう。そして、立ち上がる際は、膝を伸ばしきらないようにもしていきます。スクワットはポイントやバリエーションが多く、人それぞれ合うポジションがわかりにくいトレーニングでもありますが、「ややきつい」という感覚がある高さで、無理なく行ってみましょう。
(2)フレンチプレス
上腕三頭筋を鍛える種目です。この部分は肘を伸ばしたり、何かを押す動作をする筋肉ですので、寝ている状態や転倒してしまった状態から起き上がる際、手で床を押しながら起き上がる際、支障をきたしやすくなります。
写真ではトレーニングチューブを使用しておりますが、軽めのダンベルや水を入れたペットボトルでも代用可能です。
なるべくなら、腕を真上にしっかり挙げて頂きたいのですが、腕が挙がりにくい方は写真のような角度で十分です。そして、このトレーニングをする際のポイントは、肘の位置を変えずに曲げ伸ばしをする事です。難しいので、初めて行う方は、チューブやダンベルを使わずに、フォームの習得重視で肘の曲げ伸ばしを行ってみましょう。
大切なことは、低下を緩やかにすること
年齢と共に筋力・体力が低下してしまうのは、誰にでもあることで、決して悲観するものではありません。しかし、1日でも長く介護を必要としない身体で生活するため・・・言い換えるなら「1日でも長く自立した生活を送る」には、日常生活を営む上で支障のないレベルの筋力・体力は不可欠です。
大切なことは、低下を緩やかにすることです。そのためには、筋トレを始めとする運動習慣をつけることが必要になっていきます。ぜひ、スポーツクラブやジムに通われたり、通えなくてもご自宅でもできるトレーニングを続けていきましょう。
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私もインストラクターをしていたことがある、駅徒歩1分の少人数制のスポーツクラブ。今回の写真撮影にご協力いただきました。多彩なプログラムがあり、少人数ならではの丁寧な指導、初心者の方でも気軽に安心して参加できるおススメのスポーツクラブです。