介護タクシーコラム
介護予防vol.4 いくつになってもバランス良く食べること
みなさんこんにちは。介護予防コラムvol.2とvol.3では運動についてお伝えしてきましたが、今回は日常生活において必ず必要な「食事」と「栄養」についてお話ししたいと思います。
基本はバランスの良い食事
現在はさまざまな健康情報が氾濫しているため、何が正しいかよくわからない状態になっていますが、健康維持・増進、生活習慣病予防、介護予防において、共通して言えることは「バランス良く適量食べること」です。なぜかというと、特定の栄養素だけでは健康維持・増進、生活習慣病予防、介護予防はできないからです。
最近は、過剰な健康情報や栄養情報が多く流れ、「特定の成分が健康に良い」「特定の食品さえ食べれば大丈夫」といったような極端な情報の氾濫もあります。そのため、特定の栄養素を過剰に摂取する傾向が見受けられたり、逆に「糖質抜き」のように、特定の栄養素を排除する傾向も見受けられます。
私達は、自分自身でエネルギーや身体を作ることはできないので、さまざまな食品を食べ、さまざまな栄養素を摂取することによって、生命活動を維持しているのです。
5大栄養素とは?
さて、人間が生きていく上で必要な栄養素はたくさんありますが、大きく5つのグループにわけることができます。これを5大栄養素といいます。
炭水化物
糖質と食物繊維の総称です。糖質は身体と脳をしっかり働かせるために必要なエネルギー源です。食物繊維は人間の酵素では消化できない炭水化物のことで、腸内環境を整えたり、血糖値や血中コレステロールの上昇を緩やかにする効果が期待できます。
たんぱく質
筋肉、内臓、血液、血管、皮膚、爪、髪など、身体の構成成分となる栄養素であり、エネルギー源にもなります。ちなみに、ホルモンや酵素もたんぱく質を元に作られます。20種類のアミノ酸が組み合わさっていますが、その内の9種類は体内で合成できないので食品から摂取する必要があります。
脂質
炭水化物、たんぱく質よりも効率の良いエネルギー源となる他、細胞膜の原料、ホルモンや胆汁酸を作る働きもあります。脂質を構成する脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、体内で合成できない脂肪酸もあるので、食品から摂取する必要があります。
ビタミン
脂溶性と水溶性があり、炭水化物・たんぱく質・脂質の代謝を促しエネルギーを作ったり、身体を作る働きを補助します。ビタミンのほとんどは体内で合成できないので、摂取する必要があります。脂溶性ビタミン(A、D、E、K)は脂質と一緒に摂ると吸収率が良くなり熱による損失も比較的少ないですが、多く摂り過ぎると過剰症を起こすことがあります。
水溶性ビタミン(B群、C)は水に溶けやすいので、汁物と一緒に摂取すると良いです。過剰に摂取しても尿と一緒に排出されるので、サプリメントなどで極端に摂り過ぎなければ過剰症の心配はほぼありません。
ミネラル
ミネラルは金属元素ですが、体内において身体の構成成分となったり、代謝のサポートをするなど、体内において重要な役割を果たします。ミネラルも体内で合成されないので摂取する必要があります。
まずは、主食、主菜、副菜を揃えるところから始めよう
では5大栄養素を毎日の食事で摂取するには、どうすれば良いのでしょうか。そもそも一言で「バランスの良い食事」といっても、実際はどうすればバランスが良くなりやすいのかわかりにくいかもしれません。
栄養素一つ一つを考えすぎてしまうと迷ってしまうかもしれませんが、「食事」として考える場合は、主食・主菜・副菜をなるべく1食の中で揃え、プラスアルファとして1日の中で乳・乳製品や果物を食べるとバランスが良くなります。
主食 | ごはん、パン、麺類など、炭水化物を多く含む料理 |
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主菜 | 肉、魚、卵、大豆や大豆製品などをメインにした、たんぱく質を多く含む料理 | 副菜 | 野菜、いも類、きのこ、海藻などをメインにした、ビタミン・ミネラル・食物繊維を多く含む料理。加熱したり、汁物に入れるとカサが減り、多く食べやすいです。 |
果物 | ビタミン、ミネラル、食物繊維を含む。調理せずに手軽に食べられるので、野菜類が少ない時や、補食として利用しても良いが、糖分も多く含まれているので食べ過ぎに注意しましょう。 |
1回の食事で何をどのくらい食べるとバランスが良いのか。
それぞれの適量は、体格や性別、年齢、日々の身体活動量にもよりますが、1食当たり以下の分量を目安に食べることを意識してみましょう。
主食 | ごはん1杯(160~200g程度)、食パン6枚切り1~2枚 |
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主菜 | 1皿程度。肉・魚なら60~80g。豆腐なら1/2丁程度。卵は1~2個。尚、主菜はたんぱく質だけでなく、脂質も多く含まれるので、1食に2皿以上食べると脂質の過剰摂取に繋がります。 | 副菜 | 1~2皿。1食120g以上で、緑黄色野菜と淡色野菜が1:2くらいの割合になるようにします。ただし、近年野菜の栄養価が低くなっているといわれていますので、たっぷり食べることを意識しましょう。 |
乳・乳製品、果物に関しては、3食食べると過剰になりやすいので1日の中で牛乳コップ1杯(200mL程度)、乳糖不耐症などで牛乳が飲めない方は、ヨーグルト1パック(100g程度)とチーズ1つ(20g程度)が目安です。
果物は200g程度、リンゴやナシなら1つ分、ミカンなら2つ分、イチゴは10粒程度を意識して食べましょう。
その他に食事で意識して欲しいこと3点
- 仮にそれぞれの食材の量が理想的だとしても、調理法が偏ってしまうのも問題です。煮る、蒸す、茹でる、焼く、炒める、揚げる等、さまざまな調理法があります。その中で「炒める」「揚げる」調理法は油脂を多く使用します。当然脂質やエネルギー過剰になりやすいで、これらの調理メニューは1食の中で2皿以上にならないようにしてみましょう。
- できるだけ孤食は避け、家族や友人と笑顔で楽しく食べましょう。楽しく食べることは生活の質の向上や、将来の低栄養予防にも繋がります。
- 口腔機能の維持、食べ過ぎ防止、胃腸に負担をかけないために、しっかりよく噛んで食べましょう。
奇跡の食べ物はない!
今回お話ししたように、バランスを意識するには、食材・栄養素の量や調理法を意識することが大切です。ほとんどの栄養素は、過剰に摂取すれば過剰症が、不足してしまうと欠乏症が起こりますので、できるだけ適量を意識することも大切です。
本来は「これさえ食べれば大丈夫」という奇跡の食べ物は存在しません。さまざまな食品の中に、さまざまな栄養素が入っておりますので、どれか特定の食品に偏らず、まんべんなく食べることを意識していきましょう。