ユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)とは?
ユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)ってご存知でしょうか?最近は良く見かけるようになりましたよね。車いすに乗ったっま乗降できるミニバンタイプのタクシー、いう説明でも間違いはないのですが、ユニバーサルタクシーの定義について、国土交通省のホームページにこのような説明が載っていました。
UDタクシーの特徴
誰でも気軽に利用できるタクシー。というコンセプトのようですが、すべてのドライバーに介護職員初任者研修など要介護者や障がい者に対して専門的な対応ができる資格があるわけではありません。
現在タクシー業界ではUDタクシーの導入促進と並行して、各都道府県でユニバーサルドライバー(UD)研修を実施して、交通バリアフリーについて一定の知識を持ったドライバーを増やすことに力を入れています。2021年3月末現在、全国で104,039人がUD研修を受講しています。2020年度は12,000名を超える受講者がありました。(一般財団法人全国福祉輸送サービス協会 調べ)
車いすでスロープからそのまま乗車できたり、スーツケースなど大きな荷物をたくさん収納したりできるのは便利です。あとは妊娠中の方、小さなお子様と乗車される方、ベビーカーを使用している方などには喜ばれそうですね。
UDタクシーの中心車種はトヨタのJPN TAXI
国土交通省は2006年に施行された、いわゆるバリアフリー新法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」の基本方針で、2010年までに福祉タクシーを約18,000台導入する。と計画していたのですが、導入が進まず、約28,000台の福祉タクシー(UDタクシーを含む)の導入に計画変更となりました。
その後2017年10月にトヨタのUDタクシー「JPN TAXI」販売開始、国や自治体の補助金政策も手伝って短期間で大量の台数が導入され、2019年2月4日公布、4月1日施行の「移動等円滑化の促進に関する基本方針の一部を改正する告示」で2020年までに44,000台の導入に再び目標を修正、2020年11月にはさらに上方修正され、2025年度末(概ね5年間)で全国9万台とする目標設定を決めました。
UDタクシー導入台数に新たな目標(2020年11月)
2020年11月、国土交通省はバリアフリー法の基本方針(大臣告示)に掲げる福祉・UDタクシー車両台数の導入目標を全国9万台に上方修正しただけでなく、UDタクシーを地方に普及させることを目的に各都道府県のタクシー総車両数の約25%をUDタクシーにするという目標を新たに設定しました。(2020年3月現在、導入率25%を超えているのは東京都のみ)
これにより国および地方自治体によるUDタクシー導入補助金(助成制度)は今後も継続される見通しです。もちろん台数を増やすことは大切ですが、バリアフリーの役割をしっかりと果たしてくれる事業者に補助金を役立てて欲しいです。
2020年3月末のタクシー総車両数は227,134台。約25%というと57,000台になります。全国のUDタクシーは約2万台なので、あと37,000台の導入が必要です。この目標と福祉・UDタクシー9万台の目標を照らし合わせると、UDタクシーを除く福祉タクシー(介護タクシー)を2025年度末までに、33,000台まで増やす必要があります。すごく大きな目標ですね。
福祉タクシーの導入状況とUDタクシーの割合(2020年3月末)
2021年度末までの導入目標44,000台に対して、福祉タクシーはどのくらい導入されているのでしょうか…正解は、2020年3月末現在で37,064台です。目標に対して約7,000台及ばずという状況ですが、JPN TAXIの導入加速で2020年度末(2021年3月末)には目標達成!という見通しでしたが…残念ながら結果は41,464台で、目標に約3,500台及ばずという状況です。
一方、介護タクシー(福祉輸送限定事業)は14,084台で、2019年より282台の微増です。こちらも2018-2019年の増車数と大差はありません。昨年同様、1年間でUDタクシーがおよそ8,000台増加しています。(国土交通省調べ)さらに車種別に見てみると、増車した約8,000台のほとんどがJPN TAXIでした。
では現在UDタクシーの導入がいちばん進んでいるのはどの都道府県でしょうか?2019年3月末と2020年3月末の全国ハイヤー・タクシー連合会の統計を見比べてみましょう。
- 第1位 東京都 6,263台
- 第2位 愛知県 640台
- 第3位 神奈川県 581台
2019年3月現在 UDタクシー導入状況ランキングベスト3
- 第1位 東京都 11,230台
- 第2位 愛知県 1,075台
- 第3位 神奈川県 959台
2020年3月現在 UDタクシー導入状況ランキングベスト3
昨年同様、東京都・愛知県・神奈川県が台数が大きく伸ばしています。JPN TAXI車いす乗車問題は現在も重要な課題として残っているのですが、新型コロナウイルス感染症蔓延により外出控えが顕著になり、タクシー業界の苦境が続いていることで、残念ながらこの問題が以前ほど注目されなくなってしまいました…。
さらに、車いす乗車において比較的使いやすいと言われていた日産NV200タクシー ユニバーサルデザインが2021年4月に生産終了となり、UDタクシーの選択肢はJPN TAXIのほぼ一択となってしまいました。車いす乗車に問題があるUDタクシーがシェア拡大しているこの現状を、国やタクシー業界はどう見ているのでしょうか。今後新しい車種が出てくるのか、JPN TAXIがさらに改良されるのか…状況を見守る必要があります。
UDタクシーの課題
乗車拒否・配車拒否の解消
社会的な問題になってからも乗車拒否・配車拒否は続いています。最近では飛沫防止のビニールシートの設置を理由に乗車・配車を断る事業者もあるようです。乗車拒否・配車拒否の改善に向けて、私たちがもっと大きな声を上げる必要があると思います。
予約・配車方法の改善
介護タクシー案内所に寄せられるご意見の中に、UDタクシーの予約ができないタクシー事業者があるという声があります。事務局から問い合わせたところ「当日配車以外は受け付けていない」という回答でした。車いす利用者の方を対象にしたタクシーが、事前予約できないということに疑問を感じます。
UDタクシー対応乗場の整備
UDタクシーの普及にともない、大都市圏を中心にUDタクシー乗り場の整備が進んでいます。もっとUDタクシー乗り場が増えて欲しいですね。またUDタクシー乗り場を介護タクシー(福祉輸送事業限定)も利用できるようになると、高齢者や障がい者の外出がさらに便利になると思います。
乗降介助のクオリティ向上
車いす乗降準備の効率化(JPN TAXIも準備作業が約3分まで短縮したといわれています)、ていねいなスロープ乗降アシスト、ドア閉めの声掛け(NV200はかなり勢いよく閉めないとドアが閉じません。)、ステップ使用時の乗降アシスト(足腰の弱い方にとっては腰を下ろすセダンより、上って座るUDタクシーの方が辛いという声もあります。)などのクオリティ向上が必要です。
介護タクシー(福祉輸送事業限定)との連携
体の不自由な方、障がいのある方のお出かけをサポートするうえで、地域の介護タクシー事業者との連携は不可欠です。利用者の状況に合わせて連携して対応していくことで、いつでもお出かけをサポートできる環境を作ってほしいです。
UDタクシー関連コラム一覧
介護タクシー案内所では、ユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)の情報をコラムで紹介しています。車いすの方や歩行困難な方が、ちょっとおでかけするのに便利なUDタクシーがもっと増えるといいですね。
JPN TAXI運転手さんの声を聞きたい ~車いすユーザーより~