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介護タクシーコラム

東京運輸支局で聞いた介護タクシーのあれこれ(後編)

タクシー

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前編では介護タクシーへの苦情はどのように処理されているのか、介護タクシーの車体表示はどのようなものが適正なのかお話しさせていただきました。車体表示については支局によって解釈が若干異なるようです。柔軟な対応で利用する方のニーズに応えて欲しいですね。

後編では運賃やサービスについて、また福祉有償運送という、介護タクシーと異なる移動サービスについて私たちが利用する際に知っておきたいことを書いてみます。

東京運輸支局で聞いた介護タクシーのあれこれ(前編)を読む

メーターを実車にするタイミングは事業者によって異なる

発車時に実車にすることが決まりではない。

タクシーメータを実車にする(運賃計算が始まる)タイミングは、じつは事業者によって異なります。これは介護タクシーに限らず、一般タクシーでも同じです。迎車(指定された場所に向かう)の際に初乗り運賃を適用する事業者もあれば、予約料金、迎車料金を一切設定していない事業者もあります。また、乗降介助が発生する段階から実車をスタートする事業者もあります。

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実車のタイミングはざまざま

運賃の説明ができない事業者は・・・。

運賃は営業所の所在地を所轄する運輸支局に認可を受けて適用されます。メーターを実車に入れるタイミングなどの細かい部分は、運賃認可申請時に運賃の適用を記載して認可受ければ違法な運賃とはならないのです。ここでお伝えしておきたいのは各事業者が運賃を設定しているので、事前にきちんと確認をしておく必要があることです。つまり運賃についてきちんと説明をしてくれない介護タクシーは利用をお勧めしません。

渋滞など交通事情で変動する運賃体系の介護タクシーがほとんどなので、明確な運賃提示はできませんが、運賃の計算方法とそれに基づく想定の運賃は説明できるはずです。私たちはこういった仕組みを理解して介護タクシーを利用する必要があります。

乗客へのサービスは社会通念上問題のない範囲で

お水をサービスするの法律違反?

お客様にペットボトルのお水などの物品をサービスすること。これが道路運送法第10条「運賃又は料金の割り戻しの禁止」に該当するのか、についても質問してきました。東京運輸支局輸送担当の回答は「該当しない」でした。社会通念上問題があると判断される高額なもの、行き過ぎたサービスにはあたらないという見解です。

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社会通念上問題のないものであればOK

過剰なサービスか否かの判断は運輸支局に委ねて欲しい。

以前大問題になった個人タクシーの居酒屋タクシーは、まさに行き過ぎたサービスでした。この問題をきっかけに法令に対する解釈が厳しくなっているのが現状です。ちょっとした心遣いも法令違反といわれてしまうとなんだか寂しいですよね。

今回支局の担当者からこのような柔軟な見解をもらえたことにはホッとしました。とはいえ介護タクシーのサービスが行き過ぎたものになっていないか、事業者の方には支局に確認を取るなどきちんと対応をしてもらいたいものです。

介護タクシーと福祉有償運送は提供するサービスは同じ

最後に以前国土交通省でも聞いたことなのですが、「福祉有償運送」と介護タクシー(福祉輸送事業限定)について、制度上の違いではなく、私たち利用者が両者を選択するうえでの違いについても聞いてみました。

成り立ちに違いはあるが、利用者にとってはほぼ同じ。

福祉有償輸送は事業用ナンバー(緑ナンバー・黒ナンバー)を取得しなくても輸送ができる仕組みで、もともとは移動が困難な高齢者や障がい者に対するボランティア輸送、助け合い輸送が始まりです。2006年(H18)に施行された改正道路交通法により、登録制の事業となりました。違法な白タク行為との差別化を図る上で必要な措置だったようです。

福祉有償運送と介護タクシー(福祉輸送事業限定)のおもな違いは下記の7点になります。

  1. 事業が行なえるのはNPO法人、公益法人、医療法人、社会福祉法人、消費者生活協同組合(コープ)、農業協同組合などの団体に限られる。
  2. 地域で設置される福祉有償運送運営協議会、または地域公共交通会議で必要性であると判断された場合に登録できる。
  3. 登録は2年更新で、運営協議会が地域交通の実情に照らし合わせて更新を決定する。
  4. 輸送エリアは市区町村単位(発着地のどちらかが含まれればOK)
  5. ドライバーに2種免許は不要(指定の講習・研修を修了していることが条件)
  6. 旅客の名簿が必要(会員登録)
  7. 営利を目的とせず、運賃は一般タクシーの半額相当

上記4.に関しては都道府県単位が営業エリアとはいえ通院・通所がメインで事業所周辺で営業している介護タクシー(福祉限定)とあまり違いは感じられません。会員登録が必要という部分と運賃が割安という部分を除いては、利用者にとってあまり違いは感じられません。

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事業用車両と福祉有償車両(アイケア介護タクシー:京都)

タクシーで福祉輸送の需要をカバーできない地域の補完的な輸送サービス。

コラム、国土交通省へ行ってきた(第2回)でもお話しした通り、その地域において電車、バス、タクシー(福祉限定も含む)などの輸送事業者だけではお出かけに不自由な方の移動を十分にサポートできない場合、補完的に活動してくれているのが福祉有償運送です。

福祉有償運送事業者が活動していても車が足らない地域も多いです。車いすや体の不自由な方に対する移動サポートの効率を上げるには、ドアツードアという面で一般タクシー、介護タクシーが福祉有償運送事業者と地域の状況を共有して連携をしていく必要があります。

横のつながりを大切に、そしてお互いがルールを守ること。

以前も触れましたが、福祉有償運送が通院、通所の移送を受けていることが一般タクシーの営業、介護タクシー開業・営業の妨げになっている。という話が出てくるのは、車が足らないという状況なのにお互いの連携が取れていないことが原因なのです。みなさんがそれぞれに頑張っているのにもったいないと思います。

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地域全体で移動をサポートする必要性

また福祉有償運送事業者が国土交通省の「福祉有償運送ガイドブック」にある通り、タクシー運賃の半額等、必要以上に対価が安いことを煽って会員等の募集を行ってはなりません。という留意事項を守って活動することで、料金が高いタクシー・介護タクシーとの連携をより強くすることができるのだと感じました。

地域の交通事業者がもっと連携できれば、介護タクシーと福祉有償運送を上手に使い分けできるようになるかも知れませんね。

私たち自身が介護タクシーを正当に評価できるように

一部のホームページは介護タクシーどうしの誹謗中傷の場に・・・。

介護タクシー事業者のホームページや口コミサイトで「○○している介護タクシーは違法」「○○している事業者は悪徳業者」などと書かれているのを見ることがあります。正しいことが書かれていることもありますが、中には全く根拠がないものもあります。これは他社を誹謗中傷する行き過ぎた営業行為に私には見えます。

利用者も正しい知識を持つ必要がある。

他人の悪口ばかり言う人をどう思うか。これは受け取る人それぞれだと思いますが、私たち利用者が介護タクシーのサービスを正しく理解することで、誤った情報に惑わされることなく事業者を正当に評価できるようになるのではないでしょうか。

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知っておくことが賢い利用の第一歩

また私たちも、違法な運賃割引や過剰なサービスに対して「NO」といえることが大切です。違法な運賃割引を受け入れるということは反面、違法な運賃割増も認めてしまっている、ということになるのですから。


今回は東京運輸支局へ訪問しましたが、支局によって、担当者によって見解が異なることも多いようです。複雑な介護タクシー、福祉輸送サービスの仕組みについて分かりやすく利用される方へお伝えできるように、今後も取材を続けていきます。

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著者紹介

滝口 淳(ライター)
タクシー業界の片隅で仕事をしながら、介護福祉タクシー情報の分かりにくさを実感。障がいを持つ子どもの親として情報サイトの立ち上げを企画。現在取材活動中。

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